研究実績の概要 |
高強度・高弾性率の繊維強化複合材料(FRP)は, 航空宇宙など幅広い分野に普及し使用されている. しかしFRPは, カーボン繊維などに樹脂を含浸・成形するため, 繊維軸方向の圧縮強度と引張強度の比は0.1~0.5と低い.飛行機などの構造材では曲げ荷重に耐えるために圧縮変形部に繊維を多用して補強しているが, 引張り強度の低下を招く.このトレードオフの関係の改善が求められている. 本研究では,強化繊維束(フィラメントヤーン)をカバリング補強して, FRPの圧縮特性を格段に向上させる手法を提案する. 昨年度で試作した高強度フィラメント繊維を鞘糸としたカバリングカーボン繊維も製作できる機械で高強度繊維などの強化繊維(芯糸、カーボン繊維)に対して,引張り弾性率が大きいPBO,ガラス繊維などの少本数繊維束を鞘糸として, カバリングヤーンを試作することができた. カバリングヤーンで作製したFRPが高圧縮特性を示している. カバリングヤーンFRPの圧縮パターンと破壊様式を解析した結果, 鞘糸のバンド効果で, FRPの圧縮特性の向上に大きく貢献している. また, 強化繊維束をカバリングすることによりFRP圧縮特性への影響を解明するために, パラメータが異なる各種サンプルを作製し, 引張り試験, 曲げ試験, 圧縮試験などを行った. FRPが圧縮座屈変形のモデルを確立し, 汎用FEMプログラムでシミュレーションもした. 鞘糸の本数による影響(本数が多くなると, 芯材の強化繊維の含有率が低くなる), 鞘糸のテンションの影響(テンションが大きくなると, 圧縮強度が多くなるが, 大き過ぎると, 芯材が湾曲し, 引張り強度が低下), 鞘糸の巻角度の影響(程度の巻角度が必要)などが解明した.
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