離散的なねじり回転と連続的な曲げ変形が連成することで「線状物体の絡み合い構造」を発現する多節環状弾性体の設計および開発ならびに計測システムの構築に従事した.研究実績の詳細を以下に記す. 昨年度の研究成果より弾性部はテフロン製蛇腹チューブが適していることが確認できたため,その形状に適切に接合できる関節部の設計の見直しを行なった.次に,多節環状弾性体の形態変化を多方向から撮影する計測システムを構築した.中空ロータリーアクチュエータに取り付け冶具を介して当該構造体を吊るす方式を採用した.また,構造体内部を貫通している牽引用糸を,冶具およびアクチュエータを介して外部のハンドウィンチに接続させることで,所望の牽引試験を可能とした.そして,牽引試験中にアクチュエータを回転させることで固定カメラでの多方向からの形態変化の撮影が可能となった. 実際に多節環状弾性体の牽引試験を実施して,計測システムによって取得した写真を別途開発した3次元画像処理プログラムを用いて解析することで,当該構造体の変形形状の定量的な評価を行った.具体的には,要素数の異なる多節環状弾性体(N=8,12,16)を作製して,それぞれに両側方向からの牽引試験を行った.また,N=16に関しては片側方向からの牽引試験も実施して,両側牽引との比較も行った.両側試験では,各要素数において初期状態の円形状から関節部のねじれ回転による立体配座の形成を確認した.特に,N=12,16では立体配座の形成後に構造が折り畳まれる双安定構造が存在することを確認した.この変形モードにおける面積変化を凸包アルゴリズムで評価したところ,N=12,16で全く異なる最終形態に対しても,その面積変化率が一致する普遍的な力学挙動を明らかにした.また,片側牽引では両側牽引では見られない変形の局所化が生じ,多節環状弾性体に潜在する多彩な変形モードの観察に成功した.
|