研究課題/領域番号 |
16K14116
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
澁谷 陽二 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70206150)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 熱電子音響 / 非破壊検査 / イメージング / 仮想EAI |
研究実績の概要 |
今年度は,下記の2点を実施した. (1)非フーリエ非定常熱伝導,動弾性,圧電特性の3つの物理のマルチフィジクス問題としての3次元定式化はすでに完了しているので,その連成問題の数値解析手法の検討を行った.有限差分法を用いた1次元及び2次元軸対称の解析手法の構築は従来より進められており,2次元軸対称物体中に欠陥を有する場合の解析を行った.実際の非破壊観察手法に基づく熱電子音響イメージング(実体EAI)のモデルを解析対象にし,圧電素子(PZT)の電圧変化のフーリエ変換により,周期的温度波の周波数の変化に応じた振幅と位相を求めた.適切な欠陥モデルを導入した解析結果から,本手法は実際のプロセスに相当する解析手法であり,仮想EAIを求めることのできるモデルであることがわかった.加えて,差分法の解析結果の検証のために,1次元ではあるが有限要素解析手法を同様に開発し,双方で比較検討を行った.その結果,実用的な解析時間を考慮すれば,差分法の方が妥当であることがわかった. (2)シミュレーションに基づくイメージング(仮想EAI)と比較検討するために,参照解としての実体EAIの観察データ取得を行った.当初計画にしたがい,面内寸法10mm×10mmで板厚1mmのアルミニウム板に,最小直径0.4mmの穴加工を面内方向と平行に試料内部に設けたサンプルを試作したが,境界が不鮮明になることがわかった.つぎに,シリコン単結晶の表面に集束イオンビーム加工機により段差を設けるサンプルを試作することにより,その段差に基づく有意な位相変化を実験的に得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた事項は,ほぼ予定どおり実施されており,おおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,昨年度に引き続き下記の2点を行う予定である. (1)マルチフィジクス問題に関する数値解析手法の3次元化を目指すとともに,引き続き昨年度の試料に対する仮想EAIの取得を行う.解析手法として現在有限差分法を用いているが,多様な境界条件の表現のために有限要素法への切り替えも引き続き検討する. (2)集束イオンビーム加工機を用いた欠陥導入方法が効果的あることが昨年判明したので,引き続きその手法を用いたサンプル作りを実施する.深さの変化とともに,表面と裏面への導入により,そのトポロジーの変化に対する実体EAIを取得する.そして,(1)の手法を用いて欠陥部で散乱されるエネルギー輸送を調査し,欠陥形態に応じたイメージングの元になる位相変化について詳細に検討とともに,熱電子音響イメージングの精度を向上させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度で適切な予算執行した結果としての残額が6万円程度であり,残額は次年度に有効に活用する予定である.
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次年度使用額の使用計画 |
残額6万円程度は,次年度の消耗品購入に計上する予定である.
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