固体の振動現象を司る群構造の同定を目的として,本研究では二次元分子の示す非線形振動の対称性解析を行った.数値解析の結果,非線形効果によって基準振動モードの整数倍の角振動数を持つ高調和振動の励起が確認され,その振動対称性は角振動数の係数のパリティに依存し,二つの異なる既約表現が交互に出現することを明らかとした.また,この対称性の選択則は,カラー対称性を備えた磁性点群による予測結果と完全に一致している.このことから,磁性点群を用いた固体の振動対称性の分類が,従来の弾性体に留まらず,そのミクロ極限である分子振動までマルチスケールに適用可能と考えられる.
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