研究課題/領域番号 |
16K14119
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
阪上 隆英 神戸大学, 工学研究科, 教授 (50192589)
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研究分担者 |
塩澤 大輝 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (60379336)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 機械材料・材料力学 / 散逸エネルギ / 熱弾性応力計測 / 非破壊評価 / 可視・赤外同時計測 / 位置補正 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,可視光学画像-赤外線画像の同視野・同時計測により,高精度な散逸エネルギ評価システムを構築することを目的としている.本研究で開発を行っている散逸エネルギ評価システムは,高度な位置補正処理を援用した散逸エネルギ計測の高精度化,および光学計測による変形情報に基づいた散逸エネルギ評価システムの構築であり,両者を組み合わせることにより,ランダム負荷下での散逸エネルギ計測を可能にするものである. 初年度である平成28年度には,可視-赤外同視野・同時計測システムの構築のための準備作業と並行して,赤外線サーモグラフィの時系列連続画像における位置補正処理技術の構築を行い,その有効性について実験的に検証した.微小視野を対象に行う,熱弾性および散逸エネルギの顕微計測においては,計測対象物のわずかな変形でも,計測視野内での対象部位の相対移動量および変位量が大きくなる.このため,顕微計測では,位置補正処理が高精度計測のための必須技術となる.位置補正処理の効果を比較した結果,位置補正処理を施すことにより,熱弾性応力測定による応力分布が有限要素解析結果と同様の分布を示すこと,塑性変形が生じる応力集中部において大きな散逸エネルギを示す分布が得られることなど,顕微計測における位置補正処理の有効性が確認された.さらに,熱弾性応力計測を複合材料に適用した場合には,繊維-樹脂界面におけるはく離などの損傷による熱弾性温度変動およびその位相に現れる変化を抽出できることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の重点課題とした,可視光学画像-赤外線画像の同視野・同時計測による,高精度な散逸エネルギ評価システムの構築においては,可視光学高速度カメラを導入し,これに高感度高速型赤外線カメラおよび同期信号発生器を組み合わせた,可視光-赤外線同期計測システムの開発を行った.本システムの開発の主要部分の作業はほぼ完了している.これと並行する形で,熱弾性および散逸エネルギの顕微計測における位置補正技術の有用性を実験的に検証した.散逸エネルギの顕微計測は,散逸エネルギ放出メカニズムを解明するうえで重要であり,有益な成果が得られたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては,可視光学画像-赤外線画像の同視野・同時計測による,高精度な散逸エネルギ評価システムを完成させる.これにより,位置補正処理の向上を図り散逸エネルギ計測の精度の更なる向上を目指すとともに,本研究課題の目標である変形情報に基づいた不規則荷重負荷下における散逸エネルギ評価システムの構築を行う予定である. 計測システム構築後には,実験室レベルの試験体に対して実験的検討を行う.まず,波形が既知の荷重負荷を与えた場合の散逸エネルギ放出分布を変形情報に基づき求め,結果を従来法と比較する.次に,ロックイン計測可能な変動周波数による不規則荷重負荷の下で同様の実験的検討を行う.また,状況が許せば,実構造物を対象に不規則荷重負荷下における散逸エネルギ評価を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に実施を予定している,実験室レベルの荷重負荷試験に用いるための不規則荷重負荷試験装置の製作において,工程に遅れが生じたため,このための予算を平成29年度に繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
実験室レベルの荷重負荷試験に用いるための不規則荷重負荷試験装置の設計・製作は順調に進んでおり,平成29年度早々に使用予定となっている.
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