研究課題/領域番号 |
16K14120
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野口 博司 九州大学, 工学研究院, 教授 (80164680)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 金属疲労 / き裂 / 硬度 / 特異点 / 材料評価 |
研究実績の概要 |
国土強靭化計画、水素社会の構築などで金属疲労が益々問題になることが予測される。しかしながら金属疲労の研究は衰退の一途をたどっている。それは、金属疲労特性は受動的に計測されるものであり、また機械設計者の利便性を考慮して、過去のデータに基づいて経験式が提案されているためである。受動的に計測するということと、この経験式の存在が研究の駆動力を阻害している。本研究は、金属疲労特性を「き裂論」という新しい切り口で再評価し、それによって、過去の経験式の物理的意味を問い直し、経験式から離れた特性を能動的につくれることを示すことによって、金属疲労研究に新しい展開を切り開くことを目的とした。具体的には、疲れない鋼を「き裂論」によって開発することによって、新しい可能性を示すことを目標とした。具体的には以下を行った。 (1)下限界応力拡係数幅ΔKth と固溶炭素量の関係を世界で初めて測定し、従来データより40%も優れた結果が得られた。同じ固溶炭素量であるが、存在形態が異なる鋼の疲労特性を比較することによって、固溶する形態が最も好ましいものであることを明らかにした。また顕著なひずみ時効・コーキシング効果も得ることができ、外力変動にロバストな鋼が得られた。 (2)耐疲労特性を硬さで代表させるときの最適なビッカース圧子形状を探索した。その際に、塑性ひずみ塑性境界まで積分して得られた塑性変位の場が疲労進展と停留に関係することを明らかにし、その場の強さを表す新しいパラメータを導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下限界応力拡係数幅ΔKth と固溶炭素量の関係を世界で初めて測定し、従来データより40%も優れた結果が得られた。さらにΔKthと固溶炭素量の関係は線形関係にはなく、上に凸の関係が得られ、わずかな固溶炭素量によっても下限界応力拡係数幅の大幅に上昇することがわかった。このことは、研究をはじめる前から予想外できない結果であった。今まで固溶炭素量は工業的には制御されていなかったが、それを制御する重要性を指摘できた。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調にすすんでいるので、研究計画にそって研究を進める。固溶炭素は炭素がき裂先端の拡散することによって、き裂先端のみを集中的に強化させることができる。この効果がより顕著な高温域での挙動について、集中的に研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
体調を少しくずしたため、予定していた学会への発表をとりやめたため。
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次年度使用額の使用計画 |
体調は復調したので、平成28年度に行いたかった分の学会発表を平成29年度に行う。
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