光電子制御プラズマから生成される低エネルギーイオンを用いてダイヤモンド表面を原子スケールで平坦化する方法を開発することを目的とし研究を進めてきた。平成29年度は以下の成果が得られた。 (1)これまで光電子制御プラズマから生成され、ダイヤモンド基板に照射されるエネルギー粒子はイオンであると予想していたが、光電子制御プラズマの発光分光観察や放電特性評価の実験から、中性原子の存在が示唆された。中性原子が生成する要因として、光電子制御プラズマに特有の空間電荷効果が考えられる。ダイヤモンド基板近傍に生成された空間電荷層にイオンが侵入した場合、電荷交換によってイオンが中性化する。このため、基板には中性原子が衝突することとなり、基板からの持続的な電子放出(ガンマ作用)が抑制されることが実験で確かめられた。イオン照射による平坦化では、絶縁体であるダイヤモンド表面のチャージアップによるイオン照射量低減が問題となり、平坦化に支障があると懸念されていたが、この問題を一気に解決できる目処がたった。 (2)sp2/sp3結合が混在したダイヤモンドライクカーボン膜は機械コーティングなどに利用されているが、その平坦化も重要な課題である。そのため、平坦なDLCコーティング膜合成方法とその解析評価手法の開発を行った。Ar希釈メタンを用いたDLC合成では、Arイオンによるスパッタリングとメチルラジカルによる膜成長の競合過程であることがわかった。平坦なDLC膜を形成するためにはイオンスパッタリングを抑制すればいいため、光電子制御プラズマによる低エネルギーイオンが有用であると考えられる。一方で低エネルギーイオンを用いるとDLC中の水素含有量が増加し、DLCの硬さが低減してしまう問題があったが、原料にCO2を混ぜることによってDLC膜中の水素含有量を低下できることがわかった。
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