研究課題/領域番号 |
16K14127
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上村 康幸 東京大学, 生産技術研究所, 技術専門員 (20396906)
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研究分担者 |
土屋 健介 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (80345173)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電着ワイヤ / 熱間引き伸ばし / 充填剤 / 切断 / カーフロス / 複合めっき |
研究実績の概要 |
開発する工具は、極細線のワイヤにNi粒子を螺旋状に析出させた電着層と水溶性樹脂にダイヤとセリア粒子(化学的作用の促進)を混入した充填層から構成されている。電着層の役割は、充填剤のサポートである。充填層は、加工の進行に伴って平滑化され、樹脂の弾性・塑性変形により不揃いの砥粒の切れ刃の切り込み量は均一化する。これによりクラックを防止でき、鏡面創生しながら切断できると考えている。 開発する工具には、切断時の切断面を鏡面化と、切断時のカーフロス(切断溝幅:100um以下)を最小化できることが求められる。そこで初年度は、切断ワイヤ工具の開発に必要な複合めっき装置、細線化用熱間引き伸ばし装置、切断用装置を設計・製作行った。複合めっきでは、Φ0.1mmのブラスめっきワイヤにNiとCeO2(セリア)の析出を確認した。チューブの熱間引き伸ばしでは、充填剤を塗布した電着ワイヤ工具にチューブを挿入し、チューブの細線化と同時に空隙のない充填層を完成させた。引伸ばしのさいの充填剤は、完全硬化が必要なため、白金ヒーターで大気中焼結した。切断実験では、汎用のソーワイヤを使用してΦ10mmのガラス管を脆性状態ではあるが切断できることを確認した。一方、チューブを挿入したワイヤ工具は、切れ刃が出現し難くなったことで、ワイヤの撓み量が増大し、工具の断線が頻発した。断線の防止策として、切断時の工具長を短くして工具の曲げ剛性を高めるジグを組み込み改善させた。作製した其々の装置で工具の作製を行い、目的を実現できるワイヤ工具の製造を実施していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、切断ワイヤ工具の開発で必要な複合めっき装置、細線化用熱間引き伸ばし装置、切断用装置を製作し、其々について検討した。複合めっきではΦ0.1mmのブラスめっきワイヤにNi とCeO2の析出を確認した。熱間引伸ばしでは、充填剤を塗布した電着ワイヤ工具にチューブを挿入し、チューブの細線化と同時に空隙のない充填層を完成させた。引伸ばしの際の充填剤は、完全硬化が必要なため、白金ヒーターで大気中焼結した。切断のテスト実験では、汎用のソーワイヤで切断できることを確認したが、チューブを挿入した工具では切れ刃の出現が遅くなりワイヤの撓み量の増大により工具が断線する。そのため工具の曲げ剛性を高めるジグを組み込み改善させた。今後は、作製した装置で種々の切断用ワイヤ工具を作製し市販の工具と切断面・工具表面の比較を行う予定である。現在までの進捗状況としては、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、製造した三組の装置で種々の切断用ワイヤ工具を作製し、市販の工具と切断面・工具表面の比較を行う予定である。この切断実験で使用するコアのワイヤは、市販の電着ワイヤとレジンボンドワイヤである。この工具の単独使用とこれに充填剤塗布したのちチューブを挿入し、熱間引き伸ばしした工具を作製し、切断面と工具表面を比較する。引伸ばしで細線化したワイヤ工具では、切断時、充填層の保持力低下により剥離・脱落が起こり、充填剤の効果が低下する。これらも想定しながら充填剤の強度対策等を検討することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、研究成果を国内・国外で発表する予定であり、その旅費・調査研究のための費用として充てるためである。
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次年度使用額の使用計画 |
調査研究旅費、国内外への研究成果の発表のための旅費、研究成果投稿費、外国語論文の校閲費として計上する。また、基材となる市販ワイヤの購入、工具製造時に必要となるめっき関連の薬品、充填剤に含まれるダイヤ・セリア砥粒・フッ素系水溶性樹脂など消耗品として計上する。
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