本研究は、太陽熱光発電の実現に必須となる、波長選択性アブソーバ・エミッタデバイス(以下デバイス)の製作方法確立とその特性評価を目的としている。 平成29年度には、前年度の研究成果を受け、自立膜型STPVデバイス製作と評価に取り組んだ。とくに、細長いはりによって支持されたNi-Wの自立膜の設計・製作プロセスの開発に取り組んだが、内部応力による支持はりの曲がりや破断の問題があり、単純自立膜の製作に切り替えることとした。平成28年度に考案した相補転写プロセスに基づき製作を行い、両面で異なる輻射率を有する自立構造膜を製作することができた。また、エッチング用のパターンの最適化によって、自立膜‐基板間の距離を最適化するパターン設計を行った。 製作したデバイスを真空チャンバ中で加熱し、輻射スペクトルの分光分析を行った。その結果、エミッタのキャビティ共鳴効果により、輻射ピーク波長が黒体スペクトルから変調されていることが明らかとなり、本手法によるスペクトルの制御の有効性が確認された。また熱応力や熱変形の影響についても調査したが、本調査の時間内では大きな構造変形は観測されなかった。これらの結果から、本手法がSTPV用アブソーバ・エミッタデバイスの実現にとって有効な手法であることが確認されたといえる。今後は、光照射によるデバイス加熱や、赤外PVセルを用いた発電実験を行うとともに、デバイスをさらに高度化してSTPVの実現につなげることが課題である。
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