本研究は液中環境で動作可能な走査型イオン伝導顕微鏡のナノピペットプローブ(先端にサブミクロン以下の微細開口を有するキャピラリーガラス管)を用いてナノスケールの微粒子や材料を3次元的に基板上に堆積させる新奇な微細立体造形法を開発することである.複数開口を有するナノピペットを用いることで,イオン電流検出によるピペット先端と基板間の位置決め・距離制御を行いながら,ピペットに充填したコロイド状ナノ微粒子の電気泳動堆積による立体造形を実現する.液中環境での動作により,ピペット先端開口での乾燥や詰まりがない再現性の高い加工を可能にする.さらに形成した立体構造物における機械的物性を評価することで,マイクロマシンやMEMSなど機能性微細デバイス化への応用に向けての知見を得る.
29年度は前年度に構築した走査型イオン電導顕微鏡を用いてナノ微粒子の局所堆積による立体造形を様々な条件で取り組んだ.液中環境において複数開口のキャピラリー管(シータ管)を用いることで実現した位置決めと吐出加工についてピラー状立体構造物を再現性良く堆積した.また,本手法を用いて造形した微細立体構造体に対して,ばね定数やヤング率といった機械物性の評価に取り組んだ.具体的には研究室内で構築した電子顕微鏡の真空試料室内で動作するナノマニピュレータを用いて原子間力顕微鏡用のマイクロカンチレバーにて直接ピラーに接触し,たわみ変形させることで弾性や硬さなど,機械物性評価を行った.
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