本研究の目的は、MEMS技術と高温パンチクリープ成形加工との融合技術を確立することで、単結晶Si薄膜製ドーム型マイクロ触覚センサを開発することである。第一年度で実施した、センサ構造設計、高温クリープ加工条件の抽出、ならびに高温パンチクリープ成形シミュレーションによる加工後の幾何学形状予測に基づいて、第二年度では、MEMSプロセスとクリープ成形との融合によるSi薄膜製ドーム型マイクロ触覚センサの開発を推進した。研究期間の全般を通して得られた研究成果を以下に示す。 (1)高温クリープ成形シミュレーションに必須となるマイクロスケール厚さのSi薄膜((100)表面)の高温クリープ特性を、実験と有限要素法から逆解析的に同定した結果、同薄膜のクリープ定数および同指数は,温度1050℃でそれぞれ7.52×10-11 MPa-β・s-1および1.67となった。これにより、触覚センサの構造設計、性能予測を実施することができた。 (2)高温パンチクリープ成形加工によって触覚センサ作製を行った結果、パンチクリープ成形後の薄膜に破断は見られなかった。また、薄膜の面外方向変位量に関して、その予測値と実験値との間に誤差も少ないことから、三次元マイクロ構造化に成功したと言える。 (3)パンチクリープ成形の有無による不純物拡散工程結果を調査したところ、クリープ成形された拡散領域の抵抗値とクリープ成形未実施のそれとの差異は6%程度と小さいことが分かった。高温パンチクリープ成形によるSi薄膜の塑性変形が不純物拡散量に及ぼす影響は小さいと言える。 (4)作製した触覚センサの静的性能評価を実施したところ、PDMSを被覆した同センサのX方向検出感度は1.78mV/N、同Z方向検出感度は0.62mV/Nであり、高温パンチクリープ成形によって立体構造触覚センサの開発に成功した。
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