本研究の2年目となる平成29年度,スプレードライ法で作製した多孔質シリカナノ粒子に発熱機能を付与するための様々な実験を行った.その結果,癌細胞の非侵襲瞬間温熱治療への応用を目指し,生体材料のTiとSiから構成され,自己伝播発熱反応を発現する発熱ナノ粒子の製造に成功した. φ10nmのシリカ微粒子とφ100~300nmのポリスチレンビーズと純水からなる懸濁液をミスト化し,低温から高温への温度勾配を持つ電気炉に通すことで多孔質シリカナノ粒子を製造した.種々の条件を変化させ,粒子径,空孔径,空隙率の制御に成功した.スプレードライ法では,霧化時の振動子の振動数,窒素流量,5ゾーン電気炉の温度分布などを変化させて多孔質シリカナノ粒子の形状と寸法などの変化を評価した.その結果,今回の実験範囲ではいずれのパラメータの影響も小さいことがわかった.シリカゾルとポリスチレンビーズの割合と濃度を変化させて多孔質粒子を作製した結果,粒径,形状,空孔数,空孔径などを変化させることができた.ポリスチレンビーズの濃度が3wt%程度で,正配列多孔質微粒子を製造できることがわかった.溶融塩プラズマ電解法等を用い,多孔形状を崩さずにシリカ粒子中の酸素濃度を27at%まで下げることができた.スパッタや溶融塩メッキ技術でTi堆積後に粒子に電気刺激を与えた結果,1㎎の「粒子群」の状態では自己伝播発熱反応を示すことを確認した. 今後の課題は,粒子一粒で発熱反応を誘起することを実験的に確認することである.電子顕微鏡内でマイクロプローブを電極に見立てて発熱反応を誘起させるような実験技術の開発が課題である.
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