ガラス、アラミド、紙パルプ、ナノセルロース、炭素各繊維を用い繊維強化氷の検討を行った。疎水性繊維は、混合時の凝集の問題が予想されたが、実際に実験すると現象は観察されなかった。一方で繊維の浮沈の問題が生じた。これについては、低温氷フレークと繊維を水をバインダとして凝固させることで均一に混合できた。浮沈の問題が生じない紙パルプ繊維を用い、水-繊維混合物を凝固する方法と対照した。圧縮強さはやや低下したが、十分な値が得られた。動的(スライド速度100mm/min)に圧縮試験を行ったところ、同濃度(重量比)で圧縮強さはアラミド繊維≧紙パルプ≧ガラス繊維≧炭素繊維≧ナノセルロースの順となった。破壊の観察ではアラミド繊維、紙パルプ繊維で延性破壊を呈し、その他は脆性破壊を呈した。強化機構は繊維のアンカー効果によるクラック拡大抑制にあると考えられ、各繊維が許容可能な伸びが影響している。クラック拡大時の繊維の抜けは、繊維が氷とともに弾性変形し界面でせん断が生じるdebondingステージから、繊維が滑るslidingステージを経て行われるが、十分な繊維長がないナノセルロースの利用は難しいことがわかった。また、debondingステージで繊維のヤング率が氷に比べ非常に高い(ガラス繊維、炭素繊維)と、氷の塑性変形が促され強度に影響する可能性がある。また,slidingステージでは含水性繊維で水素結合の効果が考えられ、アラミド繊維、紙パルプ繊維が有利である。以上から、アラミド繊維と紙パルプ繊維を選定し、繊維濃度別圧縮強さ、熱伝導率、応力ひずみ線図を得た。アラミド繊維では長繊維において最も良い結果が得られ、圧縮試験機の冶具の強度限界まで圧縮しても割れによる荷重低下が見られない結果(圧縮強さ100MPa以上)が得られたが、試験片毎ばらつきが大きかった。紙パルプ繊維では圧縮強さは最大36MPaが得られた.
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