研究課題/領域番号 |
16K14141
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
安藤 泰久 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00344169)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | AFM / MEMS / 応力集中 / 摩擦係数 / 格子定数 |
研究実績の概要 |
本研究では,試験片に応力集中を起こすことで部分的に原子間隔を変化させ,その部分の摩擦力分布をAFM(atomic force microscope)を用いて測定することで,応力分布と摩擦力分布の関係を明らかにすることを目的としている.そのためには、AFMの試料台上で応力分布を発生させる仕組みが必要となる.そこでMEMS(microelectromechanical systems)技術を用いて、静電アクチュエータにより力を発生させる応力集中マイクロデバイスを作製した。 実験に用いたAFM は,真空チャンバを備えるSII ナノテクノロジー社製AFM SPA300HVである。カンチレバーは単結晶シリコン製(ばね定数 1.7 N/m)を用いた.応力集中マイクロデバイスはAFM の試料台にカンチレバー探針先端の結晶方位と同じ方向になるように取り付けた.摩擦力の変化を測定したわずかな摩擦力変化を捉えるために、試料表面―探針間の凝縮水による粘性抵抗の影響を小さくする必要がある.そこで,真空下で試料台に組み込まれたヒーターを用いてデバイスを超高真空中で200℃まで加熱し、デバイス表面の凝縮水を取り除いた.その後3時間冷却し、常温に戻ったことを確認して摩擦力測定を行った. 荷重と走査速度を各4条件,合計16条件を設定し,各条件においてデバイスへの印加電圧を0Vと200Vの2通り測定した.デバイス上の応力集中を生じさせる領域では荷重と走査速度の16条件全て測定を行い,比較のために設定した応力が作用しない領域では、荷重114 nNにおける走査速度4条件のみを測定した.摩擦力測定を行った領域の面積は,それぞれ300 nm×300 nmカンチレバーの長手方向に対して90 度方向に往復走査を行った.その結果、応力集中が生じている領域では、電圧を印加することによって、最大で約40%摩擦力が減少した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
摩擦力分布の測定のよって、応力分布の様子を摩擦力像として得るところまでは至っていないが、走査範囲を狭くすることで摩耗による表面の変化を安定化させることに成功し、その結果応力によって摩擦力が変化することを確認することができた点が大きい。これによって、摩擦力分布の測定においても、目的とする摩擦力像が得られる目処が立ったことになる。 したがって、概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、摩擦力分布の計測によって、原子間隔の相対的な差が摩擦係数に与える影響を明らかにすることを目指す。そのさい、プローブの先端、シリコン表面を摩耗によって十分に安定化させることが必要になる。さらに、シリコン表面に金属膜を蒸着させることで、酸化の影響が生じない条件での測定も行う。応力集中に関しては、切り欠きだけではなく、FIBによる薄膜化加工によって、より測定を行いやすい条件も実現させる。以上の方策によって、研究の目的の達成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度については、加工が極めて良好に行われた若干数のデバイスを用いて、摩擦条件の検討を中心におこなったため、加工に必要なコストを抑えることができた。さらに、デバイスの加工に当たっては、マスクレス露光を行ったため、物品費の支出が無かった。
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