中性子(または、放射光、X線)の照射によりサンプルから発生するデバイリングをIP等の二次元検出器で計測し,新データ解析理論である「cosα法」を一般化した二次元検出器方式による三軸応力解析理論を適用して応力を決定する新しい中性子応力測定技術の構築に向けて検討した。本方式は,表面側から中性子等のビームをサンプルに入射して、サンプル内部の結晶格子との干渉によって発生する回折線(デバイリング)を二次元的に計測し、その全周の半径(回折ピーク位置とデバイリングの中心との距離)の情報を精密に分析することで、全三軸応力成分を決定するものである。本方法の特長として、これまで困難であった測定試料の幅や奥行きの寸法に関する制約がなくなり,大型試料にも適用できるようになる点である。また,二次元検出したデバイリングの全周から一度に360個以上の格子歪が得られ,これらから計算される新パラメータはcosαに対して直線的になる。そして、その傾きから応力が得られるため,d0値(無応力時の格子面間隔)の扱いが大幅に緩和できる.この点は、現在普及しているX線によるcosα法の特長と類似する。さらに,円形溝付きスリットによりゲージ体積の制限が可能にでき,応力の深さ分布も得られる.このような高い実用性を持つ中性子残留応力測定法を実現することが本研究の目的である.一方、以上の技術を実現するためには、デバイリングを正確に計測することや、それを精密に分析してデバイリング半径を全周に渡り精度よく決定しなければならない。また、中性子の場合にはX線に比べて約1000倍近いサンプル内部への侵入深さの影響も無視できない。こうした課題について代表者のこれまでの研究成果を考慮して検討を進めた。本研究により、中性子に留まらず産業分野に貢献可能な実験室X線を用いた場合の残留応力測定の進展にも貢献する成果が得られた。
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