前年度に着手した膜厚制御の原理確認のための計測系の構築を進め,マイクロ構造によるナノメートル厚さの液体膜の膜厚制御の原理確認を試みた.液体膜全体に印加する静水圧により,ナノ厚さ液体膜に働く分子間相互作用による圧力を調整することで,液体膜の膜厚制御が可能かどうかを実験的に検証した.マイクロ構造は,上下のシリコン層の間に酸化シリコン層が埋め込まれているSOI(Silicon On Insulator)ウェハを用い,シリコン基板を垂直に深堀可能なDeep-RIE(Reactive Ion Etching)法を用いて作製した.これにより表および裏面で異なる構造を形成できる.そして,液体膜に印加する静水圧を調整可能な実験系を構築し,マイクロ構造と静水圧調整系を組み合わせた実験系を,エリプソメータに取り付け,ナノメートルオーダの精度で固体面上の液体膜の厚さを計測した.試料液体としては,蒸発量が小さいフッ素系の無極性の液体を用いた.膜厚制御の検証実験としては,固体面上の液体膜に印加する静水圧の大きさを変えながら,液体膜の厚さをエリプソメータを用いて測定し,印加静水圧により膜厚が制御できるかどうかを実験的に検証した.さらに膜厚の経時変化を測定し,自己修復の応答性能も評価した.これらの結果から,本研究で提案したマイクロ構造を用いた方法により,ナノメートル厚さの液体膜の膜厚制御が,原理的に可能であることを明らかにできた.
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