研究課題/領域番号 |
16K14147
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
福井 茂壽 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40273883)
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研究分担者 |
松岡 広成 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10314569)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 熱ほふく流 / 自由分子流 / 適応係数 / 分子気体潤滑 |
研究実績の概要 |
平成28年度では,超微小すきまを介して対向する平行平板や傾斜平面に温度分布が存在し,境界面における分子の反射の性質を決めるパラメータである「適応係数」が任意の場合を対象に,自由分子流領域における気体発生圧力を与える分子気体潤滑方程式(自由分子流t-MGL方程式)を用いて,以下の研究を推進した。 (1) 超微小すきまに発生する静的圧力に及ぼす適応係数の影響 自由分子流 t-MGL方程式を用いて、気体膜の静特性を線形解析する手法を確立した.具体的には,スライダの傾きβおよび印加温度τwを微小とした線形解析を行い,特に,上下面を拡散反射とした従来の場合(基準状態)と比べ,上下面の適応係数によって与えられる等価適応係数γによって与えられることをを定量的に明らかにした. (2) 超微小すきまに発生する動的圧力に及ぼす適応係数の影響 自由分子流 t-MGL方程式に対して、超微小すきまの極限であるベアリング数無限大近似を適用し、動的発生圧力の解析を行った。具体的には、任意の印加温度τwを有しスライダ面が微小な振幅で並進運動(スクイズ運動)する時に生じる動的圧力が進行波状となることを示し、その移流速度および波長が、静的圧力の場合(1)と同様に、等価適応係数γに依存することを明らかにした。 上記(1), (2)の結果は、超微小すきまに特有な流れに及ぼす境界面の分子の反射形態(適応係数)の影響の基本特性を与えるものである。また、これらの成果は、国際会議発表1件、国内大会発表2件を行うことにより、研究成果の公表に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
潤滑領域の基本流れである圧力流れ(ポアズイユ流れ)およびせん断流れ(クエット流れ)のみならず、超微小すきまに特有な流れである、熱ほふく流を考慮した分子気体潤滑方程式において、境界面の温度分布の影響に着目し理論解析を進めた。特に、自由分子流領域における流れと「適応係数」の影響に重点化して研究を進めており、静的および動的圧力の結果が概ね予想通りに得られており、研究は順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では、基本特性を明らかにするため、簡易モデルを対象に理論解析を行い、結果を得た。実際には境界面形状およびそこに分布する印加温度は任意の景況であるため、数値シミュレーションを要する。現在、任意の適応係数を考慮した分子気体潤滑方程式を数値的に解く手法を開拓中である。研究を加速して、数値解析による様々なパラメータによる影響を精力的に求めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、ナノメートル程度の超微小すきまに発生する静的および動的圧力に及ぼす適応係数の影響において、新奇な特性が解析的に得られたため、既存の科学技術計算ツールによる理論解析を加速した。 また、研究成果の速やかな発表を重視し、平成28年度の研究費については学会発表のための旅費が大半となった。具体的には、米国機械学会(ASME)の国際会議(於米国サンタクララ)1件および日本機械学会年次大会(於九大)2件である。平成28年度の助成金は、30万円弱を残しており、次年度に繰り延べる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度(最終年度)には、平成28年度の残りの30万円弱と平成29年度分の50万円の計80万円を使用予定である。具体的には、理論解析および解析結果のグラフィック化を加速するため、コンピュータ周辺機器の購入を行う。また、成果の学会発表のための旅費も計画している。
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