経皮吸収薬の薬剤浸透量を能動的に制御するには,皮膚内部の三次元構造と薬剤物性および皮膚表面のひずみと薬液浸透量の関係を結びつける定量的解析が必要不可欠である.本研究では,経皮吸収薬の浸透を表皮における塗込動作による能動的制御を目的とし,二光子顕微鏡を用いた革新的な非侵襲皮膚三次元構造の計測と,共焦点顕微鏡を駆使した独創的な薬剤皮膚表面のひずみおよび浸透量計測を行い経皮吸収量の能動的制御法の開発を目的としている. 本年度は, 1,平成28年度に構築した二光子顕微鏡を用いたin vivoにおけるブタ皮膚の三次元組織構造計測手法を用いて,バリア機能を有する角質層における薬剤浸透経路の可視化を行なった.生体毒性がほとんどない蛍光分子ウラニンを薬剤モデルとし,一軸伸展刺激を加えた皮膚に浸透した薬剤の浸透経路を高詳細に観察することで,薬剤浸透経路の観察に成功した. 2,平成28年度に構築した共焦点顕微鏡を用いた皮膚表面に付した薬剤の経皮吸収量の計測法を用いて,皮膚内部の経皮吸収浸透量の定量計測を行った.皮膚表面の三次元構造と計測した透過係数の空間分布を一対一で対応付けすることにより,皮膚構造と薬剤浸透特性および浸透促進効果の定量評価に成功した. 上述の成果より,塗込動作を付加した皮膚表面のひずみと皮膚内部への薬剤浸透量を同時に計測し,定量評価することで,塗込動作による浸透促進効果について明らかにした.さらに,皮膚へ浸透する薬物濃度を能動的に制御するために,皮膚組織の三次元構造の特徴抽出と浸透促進効果との関係について浸透モデルを構築し,皮膚構造と薬剤浸透特性について明らかにした.
|