磁性流体の流動性と吸着性の活用により、浮遊微粒子回収用の革新的プレフィルターの開発を目的として、磁性流体スパイクを流路床に設置した流動微粒子吸着デバイスを試作した。高速度カメラと観察光を調節するスリットを利用した可視化計測により、磁場による流路内磁性流体スパイク周りの流動特性の変化と微粒子回収性能を実験的に明らかにした。得られた結果をまとめると以下のようになる。 1.流路内の磁性流体スパイク高さは、700Gで最大となり、磁場強度の増加に伴い減少する。弱磁場下では、磁気微粒子に働く磁気双極子相互作用が弱くなり、磁性流体スパイクは大きくなり、スパイクが受ける抵抗は増加する。よって、磁場強度が小さいほど磁性流体スパイク界面での流動性は高くなり、外部気流に対して大きな振幅で変動応答する。弱磁場下で磁性流体スパイクの粘弾性効果があり、流動性が高い時は、微粒子が吸着した前方のスパイク群が後方へ流動し、新たなスパイク界面が後方から前面に移動する。 2.弱磁場下の磁性流体スパイクの大きな流動性に対応して、弱磁場および低流量下では、高い微粒子吸着率を得る。1850Gでは、微粒子吸着率の減少割合が小さいが、1518Gでは、その減少割合が大きく、700Gの弱磁場下では高い微粒子吸着率が維持される。微粒子吸着率は、微粒子が磁性流体スパイク中に混入し、粘度が増加し磁性流体スパイクの粘弾性効果があり、流動性が小さくなるので、減少する。 3.弱磁性流体スパイクのプレフィルターの適用にあたっては、スパイクの流動性と微粒子が吸着したスパイク部位の更新、さらには、流路内での磁性流体スパイクの固定化と圧力損失の低減が重要な因子になる。将来の研究展開では、流路内壁全面に磁性流体スパイクを付着するための流路構造と微粒子を吸着した磁性流体の回収方法も研究対象になると考えられる。
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