本研究は,流れから動力を得るための新技術『縦渦リニアドライブ』を用いた風車を実用化に導くことを目的とする.プロペラの代わりに円柱を回転翼として使用し,その下流にリング状平板を設置することで交差部付近に生じる3次元的流れと縦渦により揚力を得て回転する.左右どちらにも回転可能であり,水平軸プロペラ型ながら圧力型風車と同等の高トルクが発生する.構造の単純さ,回転制御のしやすさから様々な用途が期待できる. 平成29年度は計画通り,縦渦リニアドライブ風車の動力特性向上に向けて円柱翼の長さの効果を調べた.特に,後流リングの幅から翼の飛び出し量が大きすぎる場合にはカルマン渦が形成され縦渦による揚力が低減することを見いだし,最適な長さ,飛び出し量を実験により求めた.また,翼端渦の影響により回転力が低下することを見いだし,翼端渦を抑制するためのエンドプレートを設置することで性能が向上することを示した. パワー係数の向上のために多翼化を行い,翼の枚数の増加により回転数が受ける影響は小さいが,トルクが枚数に比例して増加することを見いだした.枚数がある値を超えると増加率が下がり,さらに枚数を増加するとパワー係数が低減することを明らかにし,パワー係数の増加には翼の間に所定の間隔が必要であることを見いだした.円柱直径,後流リングの幅,翼枚数などの幾何学的因子について条件の異なる多数の実験を行い,各形状因子を無次元化し,多翼化に際しては円柱直径と翼間距離の比に最適値が存在することを明らかにした. これらの成果は国際会議,国内の学会等で口頭発表を行った.
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