葉脈のネットワークはこのメッシュ型のようなネットワーク形態であるため、損傷しても損傷部を迂回して水を供給することができると考えられる。葉脈に対する機械的刺激(穿孔および切込)と葉内における流れの関係について可視化実験により調べ、実験試料のダメージの程度を評価した。染料で可視化された葉脈において機能している環状部の数によって、通常時と比較することでネットワークの稼働率とした。主脈の根元付近に穿孔し、さらに左右から交互に水平に葉の縁から主脈までの切り込みを入れた場合、根元付近の環状部多くの細胞が損傷した。しかし、支脈を切断しても葉脈に細胞が接していれば、葉全体に水が供給されることがわかった。葉の中央にあけられた穴の周りの細胞は損傷するが、その部分を回避して葉全体のネットワークは持続されることがわかった。ただし、損傷した部分を回避して給水するために、最短経路ではなくなるために、葉全体に水が行き渡るには時間がかかる。損傷部分にもよるが、ほぼ倍の時間がかかることがわかった。これらの実験から葉脈が給水のネットワークではなく、細胞間のネットワークが給水に重要な役割を持っていることがわかった。このため、葉脈を切っても細胞同士が繋がっていれば、給水可能であることがわかった。いわば葉全体はスポンジのような構造であり、葉脈は機械的強度を保つのに重要である。一方、葉表面の細胞に接している気孔はスポンジの表面の穴と見なせる。根がない切り花のような場合、気孔からの蒸散が給水のドライビングフォースである。このことを実証するために、気孔と同じくらいの直径の小孔をもつ葉模型を使って、吸水実験を行った。葉の気孔全体の面積を計測し、それと同じ面積を持つように種々の直径の穴を開けた模型を作って実験を行った結果、穴の面積が同じでも一つ一つの穴の直径が気孔と同じくらいでないと吸水しないことがわかった。
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