研究課題/領域番号 |
16K14168
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丸田 薫 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (50260451)
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研究分担者 |
中村 寿 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (40444020)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ハイドロフルオロカーボン / 冷媒 / 燃焼 |
研究実績の概要 |
オゾン層破壊への配慮からクロロフルオロカーボン(CFC)冷媒やハイドロクロロカーボン(HCFC)冷媒の使用が規制され,ハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒への転換が進んでいる.HFC冷媒の一つであるR32(CH2F2,ジフルオロカーボン)はオゾン層破壊係数が0で,地球温暖化係数も比較的少ないため代替冷媒として多くの用途で用いられている.しかし,R32は僅かな燃焼性を有すことが指摘されており,安全上の観点からその燃焼性の解明が必要である.初年度の28年度には,新たに装置を製作したHF処理機能を有する温度分布制御型マイクロフローリアクタによってCH2F2/airのWeak flameを対象とした実験および数値計算を行った. 最大壁面温度Tw,max = 1300 K,当量比1,流入流速2 cm/sにおいて実験及び数値計算を行った.CH2F2/airの2段のWeak flameを観察し,米国NISTによるLinteris mech.は実験結果を定性的に再現することを確認した.HRRのピーク位置,実験結果の輝度分布のピーク位置は,ともにCH4に比べ,CH2F2の方が高温側に位置した.CH2F2/airとCH4/airの火炎構造の分析から,CH2F2の反応性の低さはCF2:OおよびH2Oの残留による効果に加えて,HFの生成によって,反応帯におけるHラジカルが減少し,OHラジカルが減少するためであることが分かった.着火遅れ時間計算において,燃料の熱分解のみを抽出するとCH2F2はCH4より短い着火遅れ時間を示した.Weak flameにおける火炎構造との比較から,CF2:OとH2Oが完全に分解するような系では,CH4より高い着火性を示す可能性があることがわかった.また可燃限界のメタン燃料の場合についても実験を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒の燃焼性を調べる目的で本研究を開始した.HFC冷媒を空気中で燃焼させると,有害なHFが生成することが知られている.マイクロリアクタ装置が非常に微量の燃料だけで運用されることを考慮しても,有害生成物であるHFを処理させる排気装置の製作が必要である.そこで初年度は,通常仕様のマイクロリアクタ装置を1式製作することに加えて,HFの吸着剤を備えた処理装置も新たに製作し,安全に実験を行うことができる体制を構築した.これにより,科学的に有意な実験を安全に行うことが出来た. 実験では,CH2F2/airおよびCH4/airのWeak flameにおける火炎画像,正規化した輝度分布を得ることが出来た.この結果を,米国NISTの研究者にコンタクトして提供を受けた化学反応機構を用いた数値計算によって求められたHRRの分布と比較することで研究を格段に進めることが出来た. またメタンについては,可燃限界をはるかに下回る当量比0.3などで火炎を安定に実現できることを確認し,また希釈剤を変えた状態で,既存の詳細化学反応機構の燃焼予測性能を確認することが出来ている.
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今後の研究の推進方策 |
上記のように,ハイドロフルオロカーボン冷媒の安全な燃焼実験が可能になったこと,米国にNISTより,詳細化学反応機構を入手できたことから,当初予定を遙かに越えて研究が進捗している.同詳細化学反応機構は,ある程度信頼できることが判明したので,さらに実験範囲を超える数値実験も実施した.その結果,Weak flameにおける火炎構造との比較から,CF2:OとH2Oが完全に分解するような系では,CH4より高い着火性を示す可能性があることなど,新しい仮説構築につながる知見が得られている. 可燃限界外の混合気に対する適応性も確認出来たので,他の手法では調べることが困難な,難燃性燃料の特性解明に向けて,対象混合気を拡大する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に必要な水素ガスの所要量が,節約により予定より少なくて目的が達せられたため.
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次年度使用額の使用計画 |
29年度の実験において使用する.
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