エンジンの高効率化および環境負荷物質低減の観点から,希薄混合気の点火が必須である.しかしながら,従来の点火手法では希薄限界付近において安定した点火は困難である.本研究は希薄環境下における安定した点火手法として,非平衡プラズマを用いた点火手法に着目している.絶縁体バリア放電プラグに対し,高周波交流電圧を加え非平衡プラズマを生成し,定容容器内においてメタン/空気混合気に対して点火試験を実施した.大気圧以下の低圧環境から高圧力環境にいたるまで,プラズマ生成特性と点火特性を調べた.また,放電周波数をパラメータとすることで,点火特性の変化を調べた.同時に非平衡プラズマ反応および燃焼素反応モデルを考慮した数値計算を実施し,点火特性に及ぼす周波数の影響を化学動力学的視点から調べた.それにより,非平衡プラズマによる点火メカニズムの解明を目指した. 非平衡プラズマの生成に関しては,低圧力環境においては多くのストリーマの生成が確認された.圧力が増大するにつれて,電極間に生成するストリーマの本数の減少が顕著となり,フィラメント状の放電が観察された.周波数や電圧がプラズマ生成や点火性能に及ぼす影響が示された.分光器によりプラズマの放射挙動を測定した結果,大気圧以下の圧力では原子や分子スペクトルが明確に観察されたが,5気圧においては連続放射スペクトルが観察された.これにより熱平衡プラズマへの遷移が示唆される.放電周波数に関しては,1MHz以下の周波数において,点火エネルギーの最小値が確認された.また,数値計算では周波数が大きいほど点火遅れ時間の短縮が示されている.非平衡プラズマの生成は高周波のほうが促進される.しかしながら,高圧力環境下では高周波数を加えると非平衡プラズマから熱平衡プラズマへの遷移が容易となると考えられれる.これはイメージング分光器を用いた高速度分光結果において確認された.
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