環境温度付近の未利用エネルギーを利用した発電技術には,既に実用化されているオーガニックランキンサイクルの他,カリーナサイクルや熱電発電,熱音響エンジン等様々な原理に基づいた技術が研究されている.しかし,100℃未満の熱を高温熱源として利用する場合には,原理的に高効率で発電するのは難しいことがわかっている.そこで本研究では,低温排熱を利用した冷凍・空調技術として実用化されている吸着・脱着現象を利用し,高効率で動力回収を行う技術の開発を目指した. 吸着冷凍サイクルは,吸着-脱着現象によって冷媒を圧縮しており,吸着-脱着のサイクルは一種の熱機関サイクルを形成している.そこで,吸着-脱着サイクルから動力を取り出すシステムの最適な構成を検討するため,サイクルにおける作動ガスの状態変化を計測し,熱力学的な知見を得るための実験を実施した.実験には,吸着材として活性炭,作動ガスとしてフロン系冷媒であるR134aを使用した.吸着,加熱(昇圧),脱着,冷却(減圧)のサイクル実験の結果,今回実験した吸着材-作動ガスの組み合わせについては,吸着・脱着時間は60秒以上でほぼ吸着平衡状態に達すること,また,吸着・脱着時間は6秒から60秒の間に最適値があると思われることがわかった. また,実験装置を元に動力回収システムの一形態について性能を予測した結果,熱効率は0.2%程度であったが,熱交換器の死容積および熱容量の改良によって効率は改善でき,理想的には3%となることが明らかとなった.さらに,システムの改良および吸着材-作動ガスの最適化によってさらなる効率向上の可能性がある.
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