研究課題/領域番号 |
16K14180
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
菊地 優 北海道大学, 工学研究院, 教授 (50344479)
|
研究分担者 |
白井 和貴 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (20610968)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | Scrap Tire Pads / STP / 廃タイヤ / タイヤゴムパッド / 制振構造 / マスダンパー / 高減衰化 / 地震応答制御 |
研究実績の概要 |
本研究は、入手性・経済性・環境負荷に優れた廃タイヤゴムパッド(Scrap Tire Pads: STP)を用いた構造物高耐震化システムの開発により、従来難しかった短周期構造物の高減衰化を目指すものである。具体的な研究目的は、STPの力学特性の解明と提案システムによる地震応答制御効果の検証である。平成29年度には、次の内容を実施した。計4体のSTP試験体の静的載荷実験および動的載荷実験の結果に基づいて、STPの力学的特性について分析を行った。4体のSTP試験体は、タイヤの新旧(使用状況)、およびタイヤの製造メーカーが異なるが、STPの製作方法および実験方法は同じとした。得られた実験結果から、各STP試験体とも太さのある楕円または紡錘形の履歴ループが示され、STP単独で、すなわちダンパー等を別途設置しなくても、ある程度の減衰性能を有することが確認された。また、各STP試験体とも振動数が大きいほど等価剛性と等価粘性減衰定数が増加し、振幅が大きいほど等価剛性が低下する性状が示され、これらは各STP試験体で共通にみられた傾向であった。一方、タイヤの使用状況、製造メーカーによってSTP試験体の力学特性にある程度の差異が生じることが確認されたことから、この特性変動を地震用質量制振システムの設計の際に考慮することが必要といえる。さらに、平成29年度には、上述の実験データに基づいて設定したSTPを用いた制振システムを中層建物に適用した場合を想定し、多質点系モデルの非線形時刻歴地震応答解析を行い、提案システムの制振効果を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度までに、当初計画で予定していた複数体のSTP試験体に対する静的載荷実験および動的載荷実験を実施することができた。ただし、実験データの詳細分析は、まだ全ては完了していない状況である。また、当初計画において平成30年度に予定していた地震応答解析によるSTPを用いた質量制振システムの効果検証については、それらの一部を先行して平成28年度および平成29年度に実施することができた。これらより、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
概ね当初計画にしたがい今後の研究を進めていく予定である。平成30年度には、地震応答解析による提案システムの制御効果の検証を行う。非線形RC建物にSTPを用いた質量制振システムを設置した場合を想定した質点系モデルに対して、時刻歴地震応答解析により制振効果を検討する。また、これまでに実施したSTP試験体4体の静的および動的載荷実験から得られた各種データの詳細な分析を引き続き行う予定である。さらに、平成30年度は研究期間の最終年度であるため、研究全体の総括を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由:STP試験体の静的載荷実験および動的載荷実験の実施に際して、外部機関の協力を得ることができ、実験費用を抑えることができた。この結果、当初計画と比べてこれまでの実支出額が少なくなった。 使用計画:研究成果を国内学会や国際会議等で発表する際の国内・海外出張旅費に支出する予定である。また、本研究を円滑に遂行するために関連する国内および海外における研究動向の調査が必要であり、そのための費用として国内・海外出張旅費に使用する計画である。
|