研究課題/領域番号 |
16K14182
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
水野 毅 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20134645)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 磁気浮上 / 磁気軸受 / 磁界共振結合 / 交流磁気浮上 / 自己平衡性 |
研究実績の概要 |
(1)実験装置の設計・製作 磁界共振結合を利用した電力送電回路では,1次側回路が送電用,2次側回路が受電用となり,共通の共振周波数を持っている.交流磁気浮上では1次側電磁石をステータ,2次側電磁石を浮上体に取付ける.製作した装置は,完全非接触浮上を行うため,3組の磁気浮上機構を設けた.また,粘弾性支持を模擬するため,浮上体上部の3個の1次側電磁石は,3本のばねにより弾性支持されたステータに取付けた.さらに,ステータ・ベース間に減衰を与えるため,ボイスコイルモータ(VCM)と変位センサを3組設置した.また,この装置に加えて,従来より正確に特性を把握するため,交流磁気浮上機構の吸引力を測定する実験装置(以下,1自由度装置と略称)を設計・製作した.具体的には,八角弾性リングに2次側電磁石を固定した構造とした. (2)基本特性の測定とモデル化 1自由度装置において,回路のインピーダンス,相互インダクタンス,1次側電磁石と2次側電磁石間に作用する力など諸特性を測定した.これらの結果に基づいて,浮上体の運動方程式を含む磁界共振結合を用いた交流磁気浮上機構の数学モデルを導出し,モデル中に現れる係数を正確に同定した.磁気浮上状態に相当するギャップを与えて,吸引力などの諸特性を測定した結果と比較して,提案する磁気浮上機構のより精緻なモデルを構築した. (3)安定条件の探索(2次側巻線単数の場合) 各パラメータをいろいろと変化させて,それぞれの場合に安定性を評価した.特に,2次側回路の容量及び抵抗の値についての根軌跡を求め,各パラメータが安定性に及ぼす影響について詳しく調べた. (4)安定な磁気浮上の実現 (3)の結果,動的に安定になる条件が見つからなかったので,VCMの巻線を短絡することによってステータ・ベース間に減衰を与えて,安定な浮上機構を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)実験装置に関しては,当初は,3組の磁気浮上機構を全て差動形とする予定であったが,装置が複雑になるので,差動構造とはしなかった.しかしながら,完全非接触支持の実現など,基本的な特性を把握するには問題ない構造である.また,浮上体上部の3個の1次側電磁石を粘弾性支持するような構造は実現した. (2)交流磁気浮上機構の吸引力を測定するための1自由度実験装置を製作し,吸引力特性などを実際に正確に測定した. (3)(2)の結果,磁界共振結合を利用した交流磁気浮上機構の数学モデルを導出することができた.また,その数学モデルに基づいて,安定判別ができることを実証した. (4)(3)の結果,現状では,動的に安定になる条件が見つからなかった.しかしながら,1次側を粘弾性支持することによって,安定な浮上機構を実現できることを解析・実験の両面から示すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
複数の2次側共振回路を備えた交流磁気浮上機構について,安定となる条件を模索し,無制御での完全非接触を実現する.そして開発した磁気浮上機構を磁気支持ジャイロに適用して,浮上体に内包されるモータへの非接触給電を行いながら,完全非接触支持を実現し,浮上体への配線による悪影響のないジャイロを実現する. (1)安定条件の探索(2次側巻線複数の場合)と最適化 対象とする交流磁気浮上機構では,浮上体側に複数の特性の異なる2次側回路を設けることも可能である.この場合,調整できるパラメータは,コイルの数,その巻線比,それぞれの共振回路の容量と(外部)抵抗となるので,単一回路の場合に比べて,飛躍的に数が多くなる.したがって,総当たり的にチューニングを行うことは実質的に不可能なので,遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm、略称:GA)を利用して,最適化な条件を探索する. (2)安定の磁気浮上の実現 (1)で見出した最適な条件を実現する回路を製作し,実際に磁気浮上実現し,その性能を評価する.その結果に基づいて,必要があれば再チューニングを行う. (3)磁気支持ジャイロへの適用 磁気支持ジャイロでは,回転円板とそれを駆動するモータを内包する浮上体を磁力によって非接触支持しているが,モータへの配線が計測誤差の一つの要因となっていた.その半径方向の支持に(2)で実現した交流磁気浮上機構を用いることによって,浮上体に内包されるモータへの非接触給電を行いながら,完全非接触支持を実現し,浮上体への配線による悪影響のないジャイロを実現する.
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次年度使用額が生じた理由 |
交流磁気浮上装置を差動構造としなかったことと,外注することなく学内で製作したため,製作にかかった費用が当初の見積もりより少なくなったため.
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次年度使用額の使用計画 |
実験を効率する良く実施するには,差動構造を取り入れた方が良いので,試作した装置を改良するのに用いる.
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