(1)前年度に開発した実験装置を用いて,諸特性をさらに精密に測定することによって,数学モデルの改良を行った.その結果,より実際のシステムに合った数学モデルが得られたが,さらなる精緻化を行うには,差動形の装置を開発する必要があるとの知見を得た. (2)複数の2次側共振回路を備えた交流磁気浮上機構を開発した.対象とする交流磁気浮上機構では,浮上体側に複数の特性の異なる2次側回路を設けることも可能である.この場合,調整できるパラメータは,コイルの数,その巻線比,それぞれの共振回路の容量と(外部)抵抗となるので,単一回路の場合に比べて,飛躍的に数が多くなるので,総当たり的なチューニングを行うことは実質的に不可能である.しかしながら,複数の2次側回路がある交流磁気浮上機構の数学モデルは未だ導出されていないので,2次側回路が二つの場合について,ほぼ同じ巻き数で,一方だけに抵抗を直列接続して,減衰効果を高めることを試みた.しかしながら,安定な磁気浮上の達成には至らなかった. (3)磁気支持ジャイロへの適用 磁気支持ジャイロでは,回転円板とそれを駆動するモータを内包する浮上体を磁力によって非接触支持しているが,モータへの配線が計測誤差の一つの要因となっていた.その半径方向の支持に(2)で実現した交流磁気浮上機構を用いることによって,浮上体に内包されるモータへの非接触給電を行いながら,完全非接触支持を実現し,浮上体への配線による悪影響のないジャイロを実現することを試みた.開発した実験装置において,非接触支持の状態で,浮上体に給電し,内包したLEDを発光させることには成功した.
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