前年度の開発したレーザ加工によるPTFE層の微細パターニング技術を用いて,微細パターニングしたPTFE層によりマイクロギャップを形成させたエレクトレットセンサ(ECS)を製作し,その空中超音波の送受信特性を評価した。その結果,微細パターニングを行うことで,ECSの送受信特性が大きく向上することを見出した。そこで,コロイダルシリカをスピンコート して得られたシリカ凝集体/PTFE複合層をエレクトレットとし,レーザにより微細パターニングしたPTFE層を積層することでECSを製作したが,ECSの送受信感度が低下する傾向を示した。ECSを分解してエレクトレットの表面電位を再測定したところ,表面電位が大きく低下しており,レーザ加工により微細パターニングを行った際に生じたPTFEの変質層と,シリカ凝集体エレクトレットが接すると変質層を介して電荷が拡散してしまったためではないかと考えられる。そこで,レーザ照射によりPTFE層を除去するのではなく,PTFEディスパージョンをスピンコート 後に電極背面からレーザ照射を行ったところ,変質層を生じさせずに選択的にPTFEを焼成することができた。一方,前年度に引き続きフレキシブルECSを複数取り付けたモーションセンサアレイについて,物体の位置検出精度の向上を試みた。水中や生体用の超音波プローブでは,周波数変調(チャープ波)を用いたパルス圧縮技術が用いられているが,圧電素子を用いた空中超音波センサは,狭帯域であるためパルス圧縮に適していない。一方,ECSは広帯域の周波数特性を有することから,チャープ波を用いて物体検出を行い,パルス圧縮が位置検出精度に及ぼす効果を調べた。その結果,チャープ波を用いることで,パルス波やバースト波と比較して物体位置検出の有効範囲が拡がることが明らかとなった。
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