本研究は、進行波を生成しながら血管内を推進する自走式カテーテルの創製を目指している。すなわち、創製を目指すアクチュエータとは、中空の単線チューブ内へパルス状に流体圧を印加することにより、ミミズと同様に、軸方向の伸長波を先頭から根元へ逐次伝播しながら進む、全く新しい駆動構造である。 その実現にあたり、平成28年度までに、同一ラインに設けた流路面積の異なる複数のチャンバーが、伸長・収縮時に互いに位相差を生じる現象に着眼した流体駆動アクチュエータの基本動作の設計方法を構築してきた。平成29年度は、血管内の移動機能の向上策について検討した。具体的には、1) 血管径の変化に適応できる構造と推進原理の構築、および2)推進速度を向上させるためのオリフィス径およびチャンバー長の最適設計の方法の検討、などを行った。 進行波を生成する構造として、同一ラインの先端から根元に向けて流路面積の異なる穴を複数設け、各穴毎にマッキベン式柔軟アクチュエータを1つずつ被せる構成を導入した。オリフィス径およびチャンバー長の最適設計により、外径3mm、長さ1500mmの自走式カテーテルが、圧力50kPaの空気圧駆動により、内径4~6mmのチューブ内を7mm/sの速度で蠕動運動を行いながら移動可能なことを確認した。また、血管径が4~12mmまで変化する場合でも、導入した適応機能により、5~9mm/sの速度で移動可能なことを確認した。今後は、血管以外の体内管路への適用の可能性も探る。
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