本研究では、振動エネルギーを電気エネルギーに変換するエネルギーハーベスト技術として誘電エラストマーの応用を検討し、誘電エラストマーを用いた振動センサ機能付き発電デバイスを創出するために必要な基礎技術を構築することを本研究全体の目的とする。特に、振動検出回路の構築および発電出力特性向上の指針を得るための検討を行っており、平成29年度は次に示す実験項目を実施した。
(1) 振動検出回路の構築と評価 振動に応じた誘電エラストマーの変形を電圧変化から検出する方法を検討し、ヒステリシスコンパレータとトランジスタスイッチを用いた振動検出回路を構築した。誘電エラストマーの変形と電圧変化の同時観測により、振動を検出できることを明らかにした。さらに、電圧変化が基準値に達した時に誘電エラストマーが所定の電圧まで放電し、発電出力を取り出せることを明らかにした。
(2) 発電出力の評価と出力向上指針の検討 昨年度に構築した発電出力評価回路と振動変形試験装置を用いて、誘電エラストマーの発電量を評価した。直径70 mmの電極を塗布した厚さ0.5 mmの誘電エラストマーを用いて、初期充電電圧14 V条件の下で電極面積が2.2 倍となる変形を付与した場合に、1度の変形で1.5 μJの発電出力が得られることを確かめた。さらに、発電出力向上の指針を得るため、誘電エラストマーのバルク部分の誘電率の観点から発電出力向上の可能性を検討した。誘電エラストマーの発電出力を、振動変形に伴う静電容量変化量をもとにエラストマーの体積を一定として定式化し、出力向上にはエラストマーの誘電率向上が有効であることを示した。また、これを実験的に確かめるために、高誘電率セラミックス粒子を充填した誘電エラストマーを作製し、電極面積が2~3倍の伸張変形においても誘電率向上が可能であることを確かめた。
|