本研究では、研究代表者らが先導研究を実施している高温超伝導誘導同期モータを対象として、冷凍機故障時も暫時運転継続可能な高熱伝達固体蓄冷媒冷却方式回転機システムの実現性を検討した。具体的には、5~10 kW 級試作モータ(運転温度に依存して出力変化)について、固体蓄冷媒中にて含浸冷却するとともに、微量の液体若しくはガス冷媒を導入してハイブリッド化し、上記固体冷媒の熱伝達特性を飛躍的に改善させるだけでなく回転子の冷却も実現する検討を実施した。本ハイブリッド冷媒によって、冷却系が故障しても固体蓄冷媒の高い熱容量によって暫時運転可能なスタンドアローンシステムが実現される。 H28年度は、5~10 kW級高温超伝導誘導同期モータの電磁・詳細設計を完了し、また同機を冷却する固体蓄冷媒/微量液体(orガス)冷媒作製システムを開発した。 H29年度は、上記超伝導モータを固体蓄冷媒含侵冷却して、シャフトを鉛直上向きに取り出して回転試験可能なシステムを開発した。その際、負荷はパウダーブレーキによって印加する構成とした。そして、試作したモータをまず液体窒素中に浸漬冷却し、その後当該窒素をロータリー真空ポンプで減圧することによって固体窒素含侵状態とした。本条件下において、シャフトやベアリング部を凍り付かせることなく最高回転数1800 rpmまでの負荷回転試験に成功した。また、同様の冷却条件において微量のネオンを追加導入して、回転時冷却特性の改善を確認した。さらに、外部からの冷媒の供給を停止して、冷凍機のみで暫時冷却回転試験が可能なことを実証した。 上記2年間の研究成果は、高温超伝導モータの新しい冷却方法の候補の一つとして重要になると期待される。今後は、上記ハイブリッド冷媒含侵モータシステムについて、応用に即した可変速試験を実施し、その冷却特性を精査したい。
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