SMES(超伝導電力貯蔵装置)は長寿命且つ大電力の瞬時応答が可能という特長を有するが、貯蔵密度がLiイオン電池等と比べ大きく劣っている。そこで本研究では、Liイオン電池を凌駕する貯蔵密度(600kWh/ m3)を実現することにより、現状のSMESの短時間(秒単位)・大出力貯蔵装置(瞬低補償用)という位置づけから、分単位(負荷標準化)、時間単位(揚水発電の代替)にまで応用範囲を広げることを目指すこととした。このようなSMESを実現するためのコイル仕様を試算した結果、50T程度の超高磁場の発生、500 A/mm2を超える電流密度、5GPa(フープ応力)を超える機械強度を達成しなければならないことがわかった。本年度は、本来二律背反の関係にある高熱的安定化と高電流密度化を両立する巻線方式として、線材間に絶縁を施さない無絶縁コイル(NIコイル)巻線方式に着目した。NIコイルは主に直流磁石応用が想定されているが、SMESにも活用できれば、高い熱的安定性を維持しつつ高電流密度・高貯蔵密度が実現できる。しかし、NIコイルは線材間が無絶縁状態なので、充放電時に周方向電流だけでなく、径方向、すなわち線間方向にも電流が流れ、ジュール損失が発生してしまう。そこで本研究では、SMESの充放電動作を模擬し、発生するジュール損失から効率を算出し、層間電気抵抗に対する依存性を定量的に求め、NIコイルのSMESへの適用可能性を解析・評価した。効率は、層間電気抵抗と充放電周期に大きく依存し、当然、接触抵抗が小さいほど悪く、大きいほど良いという結果が得られたが、完全なる絶縁コイルでなくとも有限の層間電気抵抗値でも高効率を維持できることがわかった。したがって、無絶縁巻線方式を採用し、層間電気抵抗の最適化制御を施すことで、高効率且つ高安定・高貯蔵密度という特性を持ったSMESを実現できる可能性を示すことができた。
|