研究課題/領域番号 |
16K14221
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
本久 順一 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (60212263)
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研究分担者 |
冨岡 克広 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (60519411)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 半導体ナノワイヤ / 光検出器 / 有機金属気相選択成長 / 流量変調エピタキシー法 |
研究実績の概要 |
本年度は、Si基板上に有機金属気相選択成長により所望の混晶組成を有するInGaAsナノワイヤを成長する手法について検討した。InGaAsの混晶組成はMOVPE選択供給するGa原料とIn原料との組成比を変化させることにより制御可能であるが、Si表面にInGaAs初期成長核を形成する場合に供給組成による差のあることが過去に報告されている。しかし、本研究において、適切な表面熱処理、流量変調エピタキシー(FME)法の導入、そしてFMEのサイクル数を最適化することによって、気相中の混晶組成34%から65%の範囲で、高い均一性を有し、Si基板上で垂直配向したInGaAsナノワイヤアレイを組成によらず形成することに成功した。そして、作製された試料をX線回折測定およびPL測定により評価した結果、原料供給組成比に応じて成長されたInGaAsナノワイヤの混晶組成比が変化することを確認するとともに、実際に形成されたInGaAsナノワイヤの固相中のIn組成は原料供給比よりも若干大きい(35%~83%)ことが確認された。これは、従来のGaAsあるいはInP基板上の結果と同じ傾向であり、InがGaよりもInGaAs中に取りこまれやすいということで説明可能である。これらのことにより、通信波長帯をカバーする所望の組成比のInGaAsナノワイヤをSi基板上に形成する手法を確立することができた。また、p形Si基板上にn形にドープしたInGaAsを成長することによってpn接合を有する構造を形成した。そして、その構造に対し上下に電極を作製した2端子素子を作製しその電流電圧特性を評価したところ、整流性を得ることができ、期待どおりpn接合が得られていることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、Si基板上に有機金属気相選択成長により所望の混晶組成を有するInGaAsナノワイヤを成長する手法を確立することができ、またpn接合を有する試料の形成と、その試料を用いて2端子素子の作製・評価を行ったところ、整流性が得られたことから、光検出器作製のための基本的なプロセス手法が確立できた。これらの点から研究はおおむね順調に進展していると判定できる。しかし、2端子素子の光電流測定を行ったところ、まだ初歩的な検討段階であはるが、光照射による電流変化は観測できず、光検出器としての動作は確認できなかった。これは当初から予想されていた、Si基板とInGaAsナノワイヤの界面における欠陥に起因する問題と考えており、形成できているナノワイヤの断面寸法がミスフィット転位を完全に抑制できるほど十分に小さくないためだと考えている。したがって断面寸法の微細化に関する検討はまだ不足しており、そのため形成されているInGaAsナノワイヤの光学的な品質という面では今後さらに検討する必要があると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまずInGaAsナノワイヤの断面寸法の微細化、および微細化によるInGaAsナノワイヤの光学的品質の改善を試みる。それと平行し、InGaAsナノワイヤ中にpn接合を有する構造を形成し、それを利用して2端子素子の作製、ならびに光電流測定を行うことによってナノワイヤの光吸収スペクトルを測定し、光検出器としての動作を確認するとともに、ナノワイヤの直径・アレイの間隔などを調整して、通信波長帯で良好な光吸収が得られる構造を実験的・理論的に検討する。その上で、再度p形Si基板上にn形にドープしたInGaAsを成長し光電流測定および吸収スペクトルを評価する。そして、さらに高バイアス次の電圧-電流特性および光電流特性を評価することによって、アバランシェフォトダイオードとして動作可能かどうかについて検証する。
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