(1) 前年度に引き続き、Si上のInGaAsナノワイヤの形成を行うとともに、所望のIn組成のナノワイヤを得るための条件の最適化を行った。 (2) これまでの成果を基盤として、pin接合を有するInGaAsナノワイヤをSi基板上に成長した。そしてナノワイヤをポリマー樹脂(ベンゾシクロブテン、BCB)で埋め込み、反応性イオンエッチング(RIE)にりナノワイヤ上部を露出させた後、上部に透明電極(Ti/ITO)、裏面にAl電極を形成することによって2端子素子を作製した。作製した2端子素子の電圧-電流特性を評価した結果、良好な整流特性が得られていることと同時に、波長632nmの光照射により光電流が流れることを確認した。光電流の強度依存性を測定した結果、その線形性を確認し、感度として0.13W/Aを得た。さらに、波長1.44~1.64μmの光に対しても光応答があること、また吸収端が1.64μm程度に存在すること、そしてこれに対応するInGaAsナノワイヤの組成は、設計値とほぼ一致することを明らかにした。 (3) (2)で得られたフォトダイオードの特性改善のため以下の点について実験的に検討を行い、その有効性を確認した。(i)InGaAsナノワイヤ先端部にSnのパルスドープ層を導入することによって、上部n形層に対するコンタクトの低抵抗化を試みた。結果として接触抵抗が1/30程度減少するとともに、ダイオード理想因子が改善され、そして波長632nmにおける感度も0.23A/Wと向上させることができた。(ii)InGaAsナノワイヤ成長後、InPをシェル層として成長させることによってコアシェル構造を有するフォトダイオードを作製した。コアシェル構造の導入により、波長1.55μm付近における光電流が20倍に増加し、InPシェル層が表面再結合を抑制しパッシベーション膜として機能していることが確認された。
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