研究課題
グローバルスケールの水不足問題解決や各種励起光源の小型化を目指して固体深紫外線光源の実現が期待されている。本研究では、禁制帯幅波長が深紫外線にある、六方晶窒化ボロン(h-BN)微結晶及びエピタキシャル膜における励起子の輻射・非輻射再結合ダイナミクスを明らかにして深紫外線発光素子を実現するため、(1)禁制帯幅の広い半導体を励起可能であるが発生困難なフェムト秒パルス電子線を発生し、(2)それをナノメートル台の微小領域に集束する、日本唯一の時間・空間同時分解蛍光計測(STRCL)装置を高機能化し、(3)h-BNの励起子発光寿命や空間分布の計測を行い発光機構の考察を行った。平成29年度は、h-BN微結晶、エピ層における励起子発光過程を観測するため、表面を平坦化させた金塊を、走査型電子顕微鏡の電子銃位置に対し、被観測試料から見て反対側の離れた位置に設置してバイアスし、フェムト秒チタンサファイヤレーザの第3高調波を前面側から照射してフェムト秒パルス電子を発生させた。そして、このパルス光電子を多段電界加速機能と集束機能によってSEMの電子線源位置に導入し、電子線をナノメートル台の微小領域に集束させた。上記のSTRCL装置を用いて、熱処理したh-BN微結晶及びサファイアc面上に化学気相堆積(CVD)法により堆積させたエピタキシャル薄膜の計測を行い、以下の結論を得た。(i)h-BNは間接遷移型半導体である。(ii)間接遷移でありながらよく光る原因は、巨大な励起子効果によるフレーリヒ相互作用が強く、フォノン散乱によって運動量保存則を満たせるから、また、ボーア半径が小さいので非輻射性欠陥に捕まりにくいからである。(iii)温度消光しにくいのも基本的には励起子効果である。(iv)以上の励起子発光ピーク以外に、欠陥による発光ピークの空間分布や発光ダイナミクスも計測できた。以上である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 6件、 招待講演 5件)
Journal of Applied Physics
巻: 123 ページ: 065104~065104
10.1063/1.5021788