研究課題/領域番号 |
16K14224
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 雅明 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (30192636)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 狭バンドギャップ強磁性半導体 / (In,Fe)As / (Ga,Fe)Sb / (In,Fe)Sb / スピンバンドエンジニアリング / スピンエサキダイオード / トンネル分光 / ヘテロ接合 |
研究実績の概要 |
Fe-AsやFe-Sbの正四面体結合(閃亜鉛鉱型)をもつ狭バンドギャップ・キャリア誘起III-V 族強磁性半導体とその超薄膜・量子井戸・ヘテロ構造を作製し、物性機能の研究を行った。以下にその実績と成果を示す。 1) N型強磁性半導体(In,Fe)Asを含む三層量子井戸構造をチャネルとする電界効果トランジスタを作製し、ゲート電界によって量子井戸中の電子キャリアの波動関数を動かし(In,Fe)As層との重なりを変えることによりキュリー温度(TC)を変えることに成功した(強磁性半導体ヘテロ構造による波動関数工学の実現)。さらにこれらの実験結果を、セルフコンシステントな波動関数と電子状態の理論計算で波動関数の分布を再現し、良く説明できることを示した。 2)p型強磁性半導体(Ga1-x,Fex)Sb(Fe濃度xは最大20%)の作製に成功し、様々な構造評価と物性評価から真性の強磁性半導体であること、TCが230Kに達することを示した。 3)n型強磁性半導体(In,Fe)As/p型InAsからなるエサキダイオードを作製し、トンネル分光により、(In,Fe)Asの伝導帯に大きなスピン分裂(30-50meV)を観測した。III-V族強磁性半導体の伝導帯に大きなスピン分裂が見出されたのは初めてで、スピンバンドエンジニアリングに適した材料であることを示す結果である。 4)p型強磁性半導体(Ga1-x,Fex)Sb(Fe濃度xは最大25%)の作製に成功し、様々な構造評価と物性評価から真性の強磁性半導体であること、TCが340 Kに達することを示した(Appl. Phys. Lett.のFeatured Articleに選ばれた。APL Articles in Newsにも掲載され、2016年で最も読まれた論文にランクインした)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新しい狭バンドギャップ・キャリア誘起III-V 族強磁性半導体の作製に成功し、強磁性半導体(Ga,Fe)Sbで室温を超える高いキュリー温度(340K)を実現、波動関数制御による磁性の制御を実証、伝導帯における大きなスピン分裂を観測、など、世界トップレベルの成果を挙げた。
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今後の研究の推進方策 |
上記の研究成果を基礎にして、狭バンドギャップIII-V 族強磁性半導体の高品質化、強磁性発現機構の解明、磁性の制御、スピン注入と検出、トンネル磁気抵抗効果の実現、3端子デバイス(スピントランジスタ)の実現に向けた機能開発の研究に取り組む。
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備考 |
Applied Physics Lettersに発表した下記論文がFeatured Articleに選ばれた。またAPL Articles in the Newsに掲載され、2016年で最も読まれた論文の1つにもなった: N. T. Tu, P. N. Hai, L. D. Anh, and M. Tanaka, Appl. Phys. Lett. 108, 192401 (2016).
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