研究実績の概要 |
光または熱の微小なエネルギーを高効率で電気エネルギーに変換する革新的な発電素子の創製に向けて、室温スピンゆらぎ磁性体・酸化鉄薄膜(SiおよびAl添加Fe2O3薄膜)の作製実験を実施した。Si, Al添加および非添加の二種の酸化鉄ターゲットを順次交換して用いた二段階パルスレーザー堆積法により、FeサイトをSiおよびAlで置換した高品質な結晶薄膜の作製に成功した。また、Si, Al添加量、製膜時の酸素圧力、製膜速度等のパラメータを最適化することにより、室温でクラスターグラス状態を実現するとともに、室温で光誘起電子移動による磁化の増大(光誘起磁性)が起こることを確認した。次に、この薄膜のスピン偏極率(ハーフメタル特性)を評価するために、Schottky接合ダイオード構造を作製して実験を実施した。まず、基板にNbドープSrTiO3単結晶(001)を用い、上記と同様に二段階PLD法によって、Si,Al置換Fe3O4薄膜を成長させた。この試料の電流-電圧特性を評価した結果、室温において整流性が確認され、I-V曲線は熱電子放出モデルでフィッティングできることが分かった。すなわち、Si,Al:Fe3O4/Nb:SrTiO3(111)の界面はショットキー接合が形成されていることが示唆された。このようなSchottky接合型の構造におけるスピントンネリング特性は、強磁性体層のスピン偏極率Pを用いて、I(0)/I(B)=[1+ P(μBB/kBT)]-1×100 (I:トンネル電流、μB:磁化, B:磁場, kB:Boltzmann定数)のような単純な形で表すことができ、Schottky接合ダイオードの磁気抵抗を測定してこの式を適用することによって、スピン偏曲率を算出した。その結果、300Kでのスピン偏極率28.4%が得られた。
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