研究課題/領域番号 |
16K14227
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
喜多 浩之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (00343145)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 電子・電気材料 / 表面・界面物性 / 半導体物性 / 電子デバイス・機器 / 光照射 / 炭化ケイ素 / 界面準位密度 |
研究実績の概要 |
バイアスを印加した状態のSiCのMOS構造へ光を照射し,光で生成したキャリアを界面へ蓄積させると,その一部が熱酸化SiO2膜中の欠陥構造に由来するトラップ準位に捕獲され,これに伴う界面蓄積電荷量が増減する。本研究ではこのような電荷増減量から界面トラップ準位の解析を試みている。特にH28は測定手法の確立のため,異なる特性を示すMOS構造を評価対象とした。尚,当研究室では既にチャネル移動度が大きく異なるMOSFETを作り分ける技術を確立している。 まず,各MOS構造に対してゲート電圧印加によって表面ポテンシャルを制御しながら,光照射時と光遮断後のキャパシタンスの差分によってトラップ電荷量の総量の推定を行った。どの試料もバンドギャップ以下のエネルギーである1.7eV程度よりも波長を短くすることで応答が現れるが,その応答量には試料間に大きな違いが表れた。ところがこの大小は,電気的測定手法で決定した界面準位密度(Dit)とは必ずしも相関しない。各評価試料に対応した条件を用いて作製したMOSFETでのチャネル移動度と比較してみると,Ditよりも今回の光照射測定によって評価されたトラップ量の方が,チャネル移動度の値と相関していると判断された。これは汎用的なDit評価手法では狭いエネルギー範囲に存在するトラップのみが対象となるのに対し,本手法ではほぼバンドギャップ全域のエネルギー範囲のトラップ量が評価される点が重要であるためと推定される。このように本手法はMOSFETのチャネル移動度に直接的に影響を及ぼすキャリアトラップ効果の正当な評価のために有効な測定手法となっているものと期待できる。次年度は,本手法のほか,遮断後の経時変化の解析などによりトラップのエネルギー的な分布や空間的な分布についての評価可能性を検討する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画どおり,光照射を用いたキャパシタンス測定による評価技術の原理確認が進んでいる。申請時の期待どおりの計測ができない面もあるものの,試料間の特性の違いを反映したスペクトルの取得には成功しつつあり,次年度の進展が期待できる状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究に関連して実施している研究において,MOSFETの移動度に強く影響する因子が見出されつつあるため,そのプロセス条件で作成した試料を本研究における解析対象に加える。このことによって,移動度に強く影響を与える因子の評価手法としての検討を推進できると期待できる。
|