研究実績の概要 |
昨年度の研究課題を継続的に発展させながら、主に波長変換機能の最適化デザインに取り組んだ。 【課題2】波長変換機能の観測と理解:発光寿命測定より、混合ターゲットの組成に依存して、Tm, Ybイオン間でエネルギー相互輸送が生じることを明らかにしている。Tm,Ybイオン間のエネルギー相互輸送を直接的に実証するために、これらイオンの4f殻内励起を可能とする波長可変レーザを励起源としてフォトルミネッセンス測定を行った。その結果、Tmイオンの直接励起による978 nm のYb発光(7F5/2-7F7/2準位間の遷移)、Ybイオンの直接励起による795 nm のTm発光(3H4-3H6準位間の遷移)を観測することに成功した。また、励起波長に依存して観測される発光スペクトルが変化することから、特定のイオン間でエネルギーカップリングが生じていることを直接的に明らかにした。 【課題3】波長変換機能の最適化デザイン:Tm,Ybイオン間の相互エネルギー輸送による波長変換機能の最適化に取り組んだ。これまで、Tm,Yb共添加ZnOはサファイア基板上に直接堆積していたが、その界面に無添加ZnOナノワイヤ構造を挿入し、TmおよびYb発光特性への効果を調べた。ナノワイヤ作製にあたり、基板温度をパラメータとしたが、650℃において良質なZnOナノワイヤが形成されることを見出した。また、その上に形成したTm,Yb共添加ZnOにおいて、TmおよびYb発光強度が2倍程度、増大することを明らかにした。さらに、紫外光から近赤外光へのダウンコンバージョンの要となるTmイオンからの青色発光(1G4-3H6準位間遷移)の観測に成功した。 【課題4】次世代太陽電池への応用可能性の検証:具体的な方策の一つとして、Si太陽電池の上面に、最適化されたTm,Yb共添加ZnO薄膜を堆積することを検討し、その実現可能性を確認した。
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