研究課題/領域番号 |
16K14234
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐道 泰造 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (20274491)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | トランジスタ / 結晶成長 |
研究実績の概要 |
集積回路(LSI)の消費電力を低減するため、トンネル型トランジスタの研究開発が活発化している。しかし、従来材料(Si)を用いた試作デバイスではオン電流が小さい課題がある。オン電流値の向上には、直接遷移型半導体の採用が有効である。本研究では、直接遷移型バンド構造を有し、かつLSIプロセスと整合性の良好な新材料(GeSn)の創製を目指して研究を行う。
Geに高濃度Sn(≧7%)を導入すると、バンド構造が直接遷移化すると理論予測されている。しかし、Ge中のSnの熱平衡固溶度は約1%と低い。したがって、結晶成長時のSn原子の偏析を抑制し、熱平衡固溶度を越えるSn原子をGeに導入する新しい結晶成長プロセスの創出が必須となる。我々は、GeSnと同族のSiGeの液相成長において、冷却速度の高速化により固化時の偏析現象が抑制され、均一組成を有するSiGe結晶が形成できることを見いだしている。この現象は、結晶成長速度を高速化することで、異種原子の偏析が追随できなくなることに起因している。したがって、高Sn濃度のGeSn成長速度をSn原子の偏析速度に比べて上昇すれば、Sn偏析が抑制され、熱平衡固溶度を超える高Sn濃度を有するGeSn結晶が実現できる可能性がある。本年度は2年計画の第1年度として、高Sn濃度(≧10%)を有するGeSnの結晶成長プロセスを探索し、成長層中の置換Sn濃度に与える成長速度の効果を試料の熱処理条件の関数として検討した。その結果、GeSnの結晶成長速度と、熱平衡固溶度を超える置換位置Sn原子の格子間位置への移動反応の活性化エネルギーには差があり、熱処理条件を適正化すれば、熱平衡固溶度を超える濃度の置換位置Sn原子をGe結晶中に導入できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
綿密な実験計画を立てて推進しているので、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現在までほぼ計画通りに進行しているので、特に実験計画の変更は考えていない。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験装置を改良し、同時に作製できるサンプル数が増えた為、物品費が当初予定よりも削減できた。一方で、外部発表を積極的に行った結果、旅費が当初予定よりも増えた。以上が、差引額(a-b)が17,713円となった主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
より純度の高い試料作製を行う為、実験装置(主に真空系)の改善に有効に利用する。
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