研究課題/領域番号 |
16K14238
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
稲富 裕光 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (50249934)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 3Dプリンティング / 精密部品加工 / 半導体 / 微細多結晶 |
研究実績の概要 |
・微小融液の射出とその後の偏向を行うための2台の静電チャック専用電源とXステージ・Z昇降ステージの2次元的移動の同時制御、そして放射温度計を用いたノズル先端温度の計測を可能にする装置を開発した。この電源は試料漏洩による電極短絡やアーク放電時の装置保護を行うと共に印加電圧をゼロにしても試料を脱離できない現象を回避するものであり、本研究における有効性が確認された。 ・これらの装置の統合的制御のために、計測および制御システム用ソフトウェアLabVIEWでのプログラム開発を行った。 ・射出ノズルと帯電電極の間に高電圧を印加し、溶融原料をノズルから射出し同時に帯電する。射出口での融液表面に電荷を多く貯めるために、ノズル先端形状を細く鋭くし射出口を小さくすることが本研究におけるキー技術の1つである。従って、微小融液を吐出する石英ガラス製微細ノズルを試作した。そして、ノズル先端近傍の電場を乱さない赤外線集光加熱装置によりノズル先端を加熱し、アルゴンガスを用いた加圧によるガリンスタン融液(ガリウム・インジウム・スズの共晶合金、融点:-19℃)の射出過程を高速度カメラを用いたその場観察により確認した。ガリンスタンは室温で液体状態であるため、ガリウムに比べて融液射出の繰り返し実験が容易であった。 ・ビスマス・アンチモン合金の一方向凝固を行い、そのバルク結晶を得た。そして、ボールミリング装置を用いて同合金の微粉末を得るための条件を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
装置開発は順調に進んでいる。しかし、偏向電極の印加電圧と融液の偏向量との関係にばらつきがやや大きいことが技術的な課題となっている。その一因として、射出された融液量が一定でないことが考えられるので、加圧ガスの圧力と、射出ノズル・帯電電極間の印加電圧とのバランスを最適化する必要がある。更に、より高融点のアルミニウムを試料とした実験実施に至らなかったために、射出後の融液の冷却固化を確認することはH29年度での継続課題となった。
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今後の研究の推進方策 |
3Dプリンティングに向けては射出された融液量の高い再現性が求められるので、射出径が小さくかつ寸法精度の高いノズルを設計し外注する。そしてガリンスタン融液に留まらず、アルミニウム融液の射出を早期に実現し、実際のターゲット試料であるビスマス・アンチモン融液の射出につなげる。そして、造形したビスマス・アンチモン微細多結晶を切断・研磨して、組織観察、引張強度などによる機械特性測定、熱伝導率・導電率などの物性測定を行うことで、被造形物の材料特性を定量的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
高圧電源、Xステージ・Z昇降ステージなど一部の物品の購入を他予算で工面するなど当初計画を効率的・効果的に進めた結果、直接経費を節約出来た。そのため、成果を最大化するためにより多くの条件での追加実験を行い、かつその成果を公開するための学会参加、論文投稿の必要が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
原料であるビスマス・アンチモン合金などのインゴット作製と微粉末化、試料の表面処理に関する材料費・消耗品費、また、射出ノズル等の石英ガラス製品の製作費、研究打ち合わせ・学会発表に伴う旅費、他機関委託による試料分析費に充てる。
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