・既設のステンレス製真空グローブボックスを一部改造して実験に必要な真空およびガス配管と電気配線を行い、昨年度までに製作した試料移動用Xステージ・Z昇降ステージおよび微小融液射出装置を組み込んで、アルゴンの不活性ガス中でビスマス・アンチモン融液の射出実験を行った。特に、ノズル先端近傍の電場を乱さないための融液の加熱方式として赤外線集光加熱を採用し、かつノズルの内容積を減らして試料の加熱効率を上げることにより、実際のターゲット試料である同融液の溶融・射出に成功した。 ・得られた多結晶試料の熱電特性を得るために、ビスマス・アンチモン多結晶を切断・研磨して、同じくアンチモン系化合物半導体であるインジウム・ガリウム・アンチモン結晶と共に熱伝導率、電気伝導率、ゼーベック係数を測定し無次元性能指数を求めた。その結果、得られたビスマス・アンチモン多結晶の無次元性能指数は0.5を超えることはなかった。 ・得られたビスマス・アンチモン多結晶中の組成・粒径分布は強磁場中で一方向凝固により育成したバルク結晶に比べて不均一であった。その主な理由として、融液中のアンチモン濃度の経時変化、液滴の射出量や射出速度・融液温度のばらつきによる凝固速度の違いが考えられる。 ・水や有機溶媒に比べて半導体試料の密度が高いために電場による偏向量が小さい。従って、本研究結果を実用化につなげるためには、ミクロンオーダーの高温微小液滴を安定して生成することが大きな技術的課題であることが改めて明らかになった。
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