研究課題
本研究では、決定論的ドーピング法の注入可能な元素の多様化を図り、制御された単一ドーパントが動作を支配する単ドーパント回路を開発すると共に、脳におけるパルス伝導・積和・閾値演算を量子効果により抽象化・具現化して極低電力・並列機能演算を行う脳型量子回路の実現を目的として、原子レベルでのプロセス、デバイス開発から回路・システムまで、階層に跨がるチームにより、革新的情報処理システムの基盤構築を目指している。平成29年度は、以下の研究項目に取り組んだ。(1) 決定論的ドーピング法による単ドーパント量子ドット形成プロセスの開発シリコン-エルビウム系量子ドットを形成するために、シリコン中にエルビウムイオンと酸素イオンの同時注入を試み、エルビウム準位を介する光励起電流を初めて確認した。これにより、エルビウムが量子ドットとして機能することが確認できた。加えて、3次元アトムプローブ法を用いて、エルビウム、及び酸素の分布を調査した結果、酸素が量子発光効率に大きな影響を与えている可能性を掴んだ。(2) 量子ドットネットワーク単ドーパント回路の設計と構築当初計画および平成28年度の実績を踏まえて、実デバイスのパラメータを反映させたプロトタイプシミュレータを開発した。具体的には、単ドーパントを量子ドットとする多数決論理ゲートを設計し、モンテカルロシミュレーションによって、正常動作確認を確認した。本研究成果は国際会議(IEEE Silicon Nanoelectronics Workshop 2017)において発表し、本研究の有益性をアピールすることができた。
2: おおむね順調に進展している
単ドーパントを量子ドットとするネットワーク回路を初めて設計し、モンテカルロシミュレーションによって、正常動作を確認することができ、概ね順調に進展していると自己評価している。
(1) 決定論的ドーピング法による単ドーパント量子ドット形成プロセスの開発単ドーパントに基づく2次元量子ドットネットワークの形成に加えて、原子レベルでの配線やコンタクトの形成を試みる。(2) 量子ドットネットワーク単ドーパント回路の設計と構築競合ニューラルネットワーク回路について、単ドーパント回路化をさらに進める。具体的には、平成28年度・29年度で得られた知見を基に、「単ドーパントニューロン回路」、付随要素(シナプスや神経軸索回路)、単ドーパントニューラルネットーワークの構築をさらに進める方針である。特に、最近注目が集まるリザーバコンピューティング型ニューラルネットワークをヒントに目標としている単ドーパントニューラルネットワークの設計およびシミュレーションによる動作実証を行う。(3)単ドーパント回路の新情報処理システム応用探索先行する単電子ニューラルネットワーク研究を参考に、ノイズを味方に付けて動作可能な確率共鳴を活用した情報システムの探索を行う。
電子デバイスに関する国際会議における情報収集を控えたため。次年度、電子デバイス、ナノエレクトロニクスに関する国際会議において成果発表を行う予定である。
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International Journal of Parallel, Emergent and Distributed Systems
巻: TBD ページ: in press
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 56 ページ: 06GF13