研究課題
ナノスケールの巨大磁気抵抗(GMR)素子や強磁性トンネル接合素子に電流を流すと、スピン注入効果により磁性体の磁化の自励歳差運動が生じる。この現象はスピン注入発振と呼ばれる。これまで、その発振周波数は最大45 GHz程度である。本研究では、申請者が独自に開発してきた材料のユニークな特性を素子に適用することで、テラヘルツ波帯域に迫る0.1 THzのスピン注入発振を実証することを目的とする。前年度にマンガン系材料を用いたナノスケール強磁性トンネル接合でスピン注入整流効果(スピントルクダイオード)の研究を行い、70 GHzを超えるテラヘルツ波帯域に迫る高周波信号の検出を達成した。本年度は、その素子構成をベースにナノスケールGMR素子の作製を進め、テラヘルツ波帯域に迫るスピン注入発振の実証を目指した。まず、マンガン系材料極薄膜の作製に必須の規則合金下地層の、GMRや発振に対する影響を調べた。標準的な磁性材料と当該下地層を用いたGMRスタックを作製し、数%のGMRおよびスピントルク発振を観測することに成功した。次にマンガン系材料を用いた狙いとするGMR素子の作製を進めた。しかしながら、非磁性スペーサの材料とマンガン系材料を組み合わせると垂直磁化が劣化することが判明した。これは原子拡散によるものと考えられ、当初予想していなかったことである。最終的に垂直磁化マンガン系材料極薄膜を有するGMR素子を作製することに成功したが、素子層構造や薄膜作製条件の最適化に時間を要した。当該素子のGMR評価ならびに発振評価を行うため微細加工を進めたが、GMRが観測されなかった。これは微細加工の際に原子拡散が進行し、界面原子構造に乱れが生じたためであると考えられる。目標達成のためにはマンガン系材料をフリー層に用いたナノGMR素子の微細加工プロセスや層構造の更なる最適化が課題である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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10.1016/j.jmmm.2018.02.007
https://www.wpi-aimr.tohoku.ac.jp//mizukami_lab/