研究課題/領域番号 |
16K14245
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小山 二三夫 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (30178397)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ビーム偏向 / 光スイッチ / レーザレーダ / 光センサ |
研究実績の概要 |
光ビーム掃引素子は,レーザレーダ,ディスプレー,イメージセンサー,空間光スイッチなど様々な光情報処理機器の基幹要素である.現在,ポリンゴンミラー(多面体ミラー)などを機械的に高速回転することで高分解能ビーム掃引が実用デバイスとして広く使用されているものの,掃引速度が遅いことや小型化について限界がある.本研究では,周期構造の超高反射率ミラーから構成されるBragg反射鏡導波路アレイを形成し,その巨大な波長構造分散を活用することで,高解像2次元ビーム掃引機能を実現するとともに,マイクロマシンを集積した波長可変面発光レーザとの集積化を行い,従来技術では到達不可能な超高解像ビーム掃引機能を有する集積半導体レーザを実現することを目的としている. 平成28年度は,Bragg反射鏡導波路に電流を注入して増幅素子として使用する増幅機能集積により,高分解能化と素子の挿入損失の低減を目指した.電流注入により,素子長500μmで,チップ利得25dB,飽和出力23dBm以上を実現した.解像点数300以上を達成するとともに,素子長を2mm以上に長尺化し,均一性を改善することで,解像点数1,000を越える見通しを得た. 広帯域の波長可変面発光レーザとビームスキャナー集積化の設計をシミュレーションにより行うとともに,横方向結合のための微小酸化膜構造形成などプロセスと集積構造を提案した.さらに,波長可変MEMS面発光レーザを製作し,波長掃引幅,掃引速度などの掃引特性を明らかにし,機械的共振周波数で駆動することにより,120kHzの周波数で8Vの低駆動電圧振幅で30nmの波長掃幅を実現し,マイクロ秒オーダの高速ビーム掃引の可能性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超高反射率の多層膜反射鏡(Bragg反射鏡)による低伝搬損失と巨大構造分散によるデバイスの小型化と高解像点数の両立が可能である.これまでに確立した高精度な薄膜形成技術による多層膜反射鏡技術により,出力ビームの広がり角低減による解像点数の限界へ挑戦し,高解像レーザレーダへの応用可能性を探った.特に,Bragg反射鏡導波路に電流を注入して増幅素子として使用する増幅機能集積により,高分解能化と素子の挿入損失の低減を目指した.電流注入により,素子長500μmで,チップ利得25dB,飽和出力23dBm以上を実現した.この時解像点数300以上を達成するとともに,素子長を2mm以上に長尺化し,均一性を改善することで,解像点数1,000を越える見通しを得た. また,MEMS技術との融合により,広帯域の波長可変面発光レーザが実現できる.集積化の設計をシミュレーションにより行うとともに,横方向結合のための微小酸化膜構造形成などプロセスと構造について提案を行った.さらに,波長可変MEMS面発光レーザを製作し,波長掃引幅,掃引速度などの掃引特性を明らかにし,機械的共振周波数で駆動することにより,120kHzの周波数で8Vの低駆動電圧振幅で30nmの波長掃幅を実現した.波長マイクロマシン構造によるマイクロ秒オーダの高速ビーム掃引の可能性を示した.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,以下の方針に従って研究を進める. 1)2次元アレイ化による2次元ビーム掃引機能創出 半導体プロセス技術を駆使して,Bragg反射鏡導波路ビーム掃引デバイスを高密度にアレイ化を行い,熱光学効果を用いた2次元ビーム掃引の実現を目指す.高解像度化の指針をシミュレーション,実験結果を通して収集する.マイクロヒータ集積により,熱光学効果による屈折率変化の傾斜勾配を形成することで,位相差の制御の簡略化,安定性向上を実現する.さらに,シリンドリカルレンズとの組み合わせにより,ビーム形状の微小スポット化と2次元ビーム掃引の両立を目指す. 2)面発光レーザ・スキャナーの一体集積と面発光レーザの短パルス生成機能 波長可変面発光レーザ・ブラッグ反射器導波路アレイ集積化と2次元ビーム掃引素子を製作し,その特性を評価する.Bragg反射鏡導波路ビームスキャナーに電流を注入することで増幅機能を持たせ,1素子あたり10mW以上の高出力化を行う.その高密度アレイ化を行い, 50本のアレイにより,2次元ビーム掃引集積レーザの実現を目指す.さらに,電流パルス駆動により,短パルスを直接生成し,パルス遅延時間により距離計測を行うレーザレーダ方式での距離の測定分解能向上を目指す.
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