研究実績の概要 |
光ビーム掃引素子は,レーザレーダ,ディスプレー,イメージセンサー,空間光スイッチなど様々な光情報処理機器の基幹要素である.現在,ポリンゴンミラー(多面体ミラー)などを機械的に高速回転することで高分解能ビーム掃引が実用デバイスとして広く使用されているものの,掃引速度が遅いことや小型化について限界がある.本研究では,周期構造の超高反射率ミラーから構成されるBragg反射鏡導波路アレイを形成し,その巨大な波長構造分散を活用することで,高解像2次元ビーム掃引機能を実現するとともに,マイクロマシンを集積した波長可変面発光レーザとの集積化を行い,従来技術では到達不可能な超高解像ビーム掃引機能を有する集積半導体レーザを実現することを目的としている. 平成29年度は,増幅機能を有するBragg反射鏡導波路ビームスキャナーの長尺化による高解像度化と高出力化を進めた.素子長10mmでは,光出力としてCWで2.3W,パルス出力で6Wを実現し,単一モード面発光レーザの約1,000倍の高出力化に成功するとともに,波長掃引によるビームスキャナー動作により,解像点数590点を実現した.また,熱光学効果を用いた波長可変面発光レーザとビームスキャナーの集積素子を実現し,電気的に13°のビーム偏向を実現した.さらに,ビーム偏向角の拡大を目指し,マイクロマシン波長可変面発光レーザの製作を進め,マイクロマシンの駆動の際のリンギングを抑制することで波長切替の高速化の検討を行った.電圧波形の設計のため,静電アクチュエータの梁構造をモデル化し,計算により2ステップ波形の電圧でリンギングを抑制し,スイッチング速度を梁構造の機械的共振周波数の逆数の2倍程度まで高速化できることを示すとともに,製作したMEMS VCSELにおいて,1.8マイクロ秒での高速波長掃引が可能であることを実証した.
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