原子層状半導体である遷移金属ダイカルコゲナイド(Transition-Metal Di-Chalcogenide: TMDC) を用いた二次元チャネル電界効果型トランジスタ(2D-MISFET) について、三次元縦型トランジスタへの展開を探索した。初年度に行ったスパッタ法による二硫化モリブデン(Molybdenum disulfide: MoS2)膜の成膜における超高真空(Ultra-High Vacuum: UHV) RF (Radio Frequency)マグネトロンスパッタ法における成膜特性を基礎に、高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法(High-Angle Annular Dark-Field Scanning Transmission Electron Microscopy: HAADF-STEM)による断面観察によりMoS2膜の核形成と二次元及び三次元の成長モードについて検討した。まず二次元成長について、400℃までの成膜温度向上により粒径が大きくなることを確認した。従って、粒径の成長初期核形成密度依存性は小さいと考えられる。次に三次元成長について、下地基板表面の粗さに起因する結晶性の乱れをトリガーに、基板表面の法線方向へFin形状に成膜することを確認した。またRaman分光法により、Fin部分の内部応用力は小さく、結晶性が高いことを確認した。Fin形状成膜は金属Dot側壁でも観察されたが、金属Dotとの相関は小さく、基板表面に平行に成膜されるMoS2膜との相互作用が大きいことが分かった。以上により、TMDCを用いた2D-MISFETについて、基板表面法線方向へのFin形状を活用した三次元縦型トランジスタを実現するには、パターニングされた核サイトよりも、TMDC膜の粒界制御が有効であることを見出した。
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