極低群速度伝搬を実現するメタマテリアル中における気体の絶縁破壊を利用した非線形現象の実現について研究を行った。本年度は、前年度に発見した非常に強い非線形性を示す現象の解明を行った。前年度に、非常に高パワーの電磁波をメタマテリアルに照射したときにしか発生しないと考えていた現象が、比較的低パワーの電磁波を入射した際に観測されていた。この現象を、メタマテリアル周囲の気体に依存するものであると仮説を立て、気体の圧力や分圧比を変化させてメタマテリアルの非線形性について調べた。その結果、ある圧力範囲、分圧範囲において当該現象が発生することが確かめられた。この結果から、気体の絶縁破壊により生成したプラズマの影響で、その周囲の絶縁破壊電場が低下するため、予想していたものより低パワーの電磁波を入射するだけで、メタマテリアル中の複数箇所でプラズマが発生し、強い非線形現象が発生するということが明らかになった。 当初の予定では、このメタマテリアルを利用して自励パルス発振を実現する予定であったが、上記の通り、メタマテリアル中に発生したプラズマによって支援される非線形現象という新しい現象を発見したため、そちらの解明を優先した。 本研究は、メタマテリアル中における局所電磁場増強効果を最大限に活かした非線形現象の増強手法の確立につながるものであり、例えば種々の非線形現象を低消費電力で発生させるのに役立つ。また、本研究は、プラズマ生成のために必要な電力を大幅に低下させるという側面もあり、プラズマ応用分野のさらなる拡大にもつながると考える。
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