研究課題/領域番号 |
16K14252
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
前澤 宏一 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (90301217)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 共鳴トンネル素子 / 酸化物半導体 / 有効質量 / 逐次トンネル / マイクロ波集積回路 / 溶液プロセス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、移動度の小さい非晶質酸化物半導体を用いて高性能な共鳴トンネル素子(RTD) を作製し、マイクロ波/ミリ波エレクトロニクスの基礎を作ることにある。非晶質酸化物半導体は、散乱頻度が高いため、移動度が小さく、高周波トランジスタを作るのは難しい。しかし、有効質量は比較的小さく、量子効果の発現は可能である。特にRTDは、散乱頻度が高くても、逐次トンネルの効果により十分に高性能な素子が作製可能と考えられる。その動作速度は、移動度ではなく、有効質量、及び、それに依存する電流密度で決まるため、高周波動作も可能である。本研究では、非晶質酸化物半導体によるRTDを実現し、その高周波回路への適用性を実証する。 本年は、昨年に引き続き、In2O3の成膜技術の検討を進めた。また、RTDの基盤となるバリア層の評価を行うためのnin型ダイオードの試作を行った。ダイオード構造の作製には、酸化物半導体層の下部に電極層が必要となる。まず、下部電極としてエッチングに強い金を用いて試作を行ったが、その蒸着膜に平坦性の問題があり、作製したダイオードはほとんどショート状態であった。これを解決するため、比較的平坦な成膜が可能なTiを下部電極に用いることとした。しかし、この場合、酸化物半導体とのエッチング比が取れないと言うプロセス上の問題がある。これを解決するための検討を行い、バリア層評価のためのデバイス構造、プロセス条件を明らかにした。現在、その試作を行っている。一方、成膜技術に関しては、膜質評価用の電界効果型トランジスタを作製し、その移動度評価を行った。移動度としては0.4 cm2/(Vs)程度の値が得られ、溶液法としては良好な値が得られた。また、これから、電子濃度は10^18 cm-3程度の値が推定され、RTDの作製には問題ないと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
デバイスプロセスに必須な装置である、レーザー露光装置、蒸着装置に不具合が生じ、その修理に時間がかかったため。
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今後の研究の推進方策 |
装置の不具合も直ったので、計画通り、ninダイオードの試作を行い、バリア層の評価を行う。それに引き続き、RTDを試作する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)装置故障のため、実験計画に遅れが生じたため。 (使用計画)現在、装置修理も終わり、本格的なデバイスプロセスを開始する予定である。繰り越した助成金はこのための消耗品類、測定用備品類の購入に当てる。また学会参加費や論文投稿紐見込んでいる。
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