研究課題/領域番号 |
16K14261
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
馬渡 康徳 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 上級主任研究員 (70358068)
|
研究分担者 |
全 伸幸 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 主任研究員 (20455439)
藤井 剛 国立研究開発法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 研究員 (30709598)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 超伝導 / 光子検出器 / 磁束量子 / 単一磁束量子回路 |
研究実績の概要 |
本研究開発では,新原理に基づく超伝導単一光子検出器の原理実証を行う.バイアス電流を運ぶ超伝導ナノストリップが光子を吸収して生じる量子化磁束を,単一磁束量子(SFQ)回路により検出することにより単一光子を計数する新型検出器であり,常伝導転移をともなう従来型の超伝導ナノストリップ検出器に比べて桁違いに高い計数率が期待される. 本年度は,時間依存 Ginzburg-Landau (TDGL) 方程式と熱拡散方程式とを連成して,超伝導ナノストリップが光子を吸収して量子化磁束(渦糸)が発生する過程を再現する数値シミュレーションを行った.超伝導材料として Nb と NbN とを想定してシミュレーションを行い,Nb の場合は量子化磁束が発生しにくいような振舞が見られた.ただし,現在は TDGL 方程式の解である秩序パラメータの定性的な振舞から量子化磁束の発生を判断しているが,より定量的な解析を行う必要がある. また,既存の超伝導デバイス評価用冷凍機を改造して,光ファイバの導入を可能にするとともに SFQ 回路の正常動作のための磁気シールドを施した. さらに,Nb を用いた SFQ 回路の超伝導配線の一部を超伝導ナノストリップ構造に加工することにより,超伝導ナノストリップと SFQ 読み出し回路とを同一チップ上に集積化したモノリシック検出器システムを構成した.ナノストリップに光を照射しない状況で,SFQ 回路の出力確率がバイアス電流とともに対数的に増加する実験結果が得られたが,これは熱励起による量子化磁束の発生(ダークカウント)を示唆するデータであると考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TDGL方程式と熱拡散方程式との連成解析手法を確立した.また,デバイス評価用冷凍機を改造するとともに,光子を吸収する超伝導ストリップと単一磁束量子(SFQ)回路を統合した超伝導モノリシックデバイスを設計および作製した.光を照射しない場合のデバイス応答を測定し,熱励起による量子化磁束の検出を示唆する実験結果を得ることができ,本年度の目標は概ね達成した.
|
今後の研究の推進方策 |
これまで作製した超伝導モノリシックデバイスが正常に動作しない場合が多く,有効な実験データを得ることが非常に困難であった.そこで,デバイス作製工程を見直して歩留まりを向上させ,これにより多くの有効なデータ得られるものと期待される.また,光照射時の実験を行うとともに,検出器の動作を再現する定量的かつ本格的な数値シミュレーションを進める予定である.
|